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✻(終)

――あの日から5年が経過した。 5年間、与えられた名前に慣れるまで苦労しながらもごく普通の生活を送っていた。 その間、憂凪さん達からの連絡は無かったものの、つい最近になって手紙が届き冴さんのご両親に会う事が出来た。 そして、今日家には憂凪さんとファウストさんが来ていた。 「あの時は有難う御座いました、先生、ファウストさん」 「良いんだよぉ、別に。私達が勝手にした事だしねぇ」 憂凪さん達は組織を解散後、ファウストさんの母国にて暮らしていたそうだ。 5年経ったと云うのに何方も老けていない様な気がして、本当に同じ人間なのか疑いたくなる。 「ぼくにもおかしちょうだい!」 とことこと駆け寄って来た少年は俺と冴さんの間に授かった息子で、冴さんに顔立ちは似ているが性格は何方にも似なかった。素直で優しい性格に育ってくれて良かったと思う。 「ふふ、幸せになれた様で良かったよ」 「⋯それもこれも先生やファウストさん達のお陰だ」 こうして、裏社会から抜け出し新しい人生を歩み、子供を授かれるとは思いもしなかった。 普通なら叶わぬ夢だったと思うと、皆には感謝してもしきれない。 絶対に何があっても、この手を離さず生きると強く思うのだ。

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