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時間が出来たという御月堂がやってきた。
最後に会ったのはいつだったかと思うほど久しぶりに見たスーツ姿の愛したい人に、多忙の日々を送っているのならば、ここに来るよりも休んだ方がいいのではと思ってしまう一方、久しぶりに会えて嬉しいとも思っていた。
「久しぶりだな」
「はい。そうですね」
「⋯⋯」
御月堂から話しかけてくるとは思わなく、驚きつつも緊張した声音で答えた。
だが、その緊張のせいで続く言葉が見つからず消え失せてしまった。
御月堂もまたそうなのか、はたまた彼の性分もあると思われるが、それ以上何か言ってくる様子はなかった。
ところが、こちらのことを微動だにせずじっと見てくるのだ。
何か言いたいことがあるのだろうか。だとしたら遠慮せず言っても構わないのに。
その視線に耐えきれなくなった姫宮の方から話を切り出した。
「あの、私何かしましたか?」
「いや、そういうわけではない。ただ⋯⋯」
「ただ?」
「⋯⋯⋯大河は何をしている」
ふい、と目を逸らした時、急にそんなことを言われた。
「え、大河? 大河、は⋯⋯小口さんとテレビを観てますが⋯⋯」
「そうか」
一言そう言った後、御月堂は二人がいる所へ行ってしまった。
何だったのだろうと思い、急に離れていったことに寂しく思え、来てまず最初に触れ合えば良かったと今さら後悔し、ひとり肩を落としていた。
けれども、ここでひとりでこうしていても仕方ないと気持ちを切り替え、後ろから姫宮に声を掛けたそうにしている人には気づかず、その後を追った。
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