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一章ー友情ー1

 風がそよそよと低い木々を揺らし、春坂総合病院の周りには穏やかな静寂が広がっていた。 東京の喧騒から少し離れ、自然に囲まれたこの場所では、日常の騒がしさが遠く感じられる。営々と歩む住宅街や、時折見え隠れする畑が、都会の喧騒から離れた静かな雰囲気を漂わせている。  春坂総合病院は春坂駅から程近く、周囲を森に囲まれた風光明媚な場所に佇んでいた。 四季折々の木々や花々が患者たちに癒しを届け、自然の美しさが病院を取り囲んでいる。  建物は四階建てで、各階には外科から小児科、整形外科、内科、心臓外科など、多岐にわたる診療科が配置されていた。 この病院の特異な点は、若手の男性医師が活躍していることだ。 その傍ら、男性の医師や看護師が主体であるとともに、医師と看護師が連携を重ね、患者たちの診療に当たっている姿勢が、地元の人たちに信頼を寄せられる要因となっていた。  その中でも注目を集める医師がいた。 外科で腕を振るう吉良望(キラ ノゾム)。 彼の身長は日本男性の平均的な寸法に収まっていたが、その体つきは細やかで、歩くたびに女性に見紛うほどの優雅な風格を漂わせていた。

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