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ー友情ー14

「ああ! そこは無理やり、あの患者さんが俺のこと出てけって言ったんだろ? だから、俺がここにいるのは別にいいんじゃねぇのか?」 「あ、ああ……まぁ、確かにそうだけどな。 あ、ま、まぁ……とりあえず、部屋に戻ろうぜ」  とりあえず、望は和也に桜井に告白されたことを触れないように歩き始める。  望は部屋に戻ってからは溜まっていた資料やカルテの整理を一人で済ませ、気分転換とばかりにふらりと部屋を出て屋上へと足を向けるのだ。 春になったばかりの夕方というのは白衣とシャツ一枚では少しばかり寒いと感じながらも、もう一度部屋に戻るのはめんどくさいとも思ったのであろう、諦めたようにそこに留まったようだ。 「やっぱ、夕方はまだ寒かったか」 そう一人屋上で呟いても、その言葉はただただ空気に消えていくだけだ。 望は一人寒さに体を震わせながら屋上を囲むようにしてあるフェンスの向こう側を見つめる。 少し遠くに一日の仕事を終えようとしている夕日が見えるのだ。 太陽の方は今日一日の仕事終えようとしていたのだが、人間というのは例え陽が沈んだとしても仕事というのはいっぱいある。 しかし、どうして夕日というのはこう切なく悲しくも見えてしまうのであろうか。 そして夕日を見ながらポケットに潜ませていたタバコへと火を付ける望。 普段、望は煙草を常備している訳ではないのだが、たまにこうして煙草を吸いたくなった時には隠れてでもないのだけど、こう屋上へと足を向けて吸っている時があるのだ。 そして煙と同時にため息も漏らす。 「男から告白されるなんて思ってなかった事だぜ……」 そう一人呟いていると急に屋上に繋がる扉が開かれる。 そこに警戒する望。 フェンスの向こう側に沈む夕日を見つめていた望だったのだが、その瞬間、音がした方へと顔を向ける。 ここの屋上は安全のために職員だけか、職員と患者さんなら来てもいい場所でもあるのだけど夕方のこの時間になるとこの場所に来る人なんかほぼいない。 だから余計に警戒してしまったという事だろう。 しかし、この時間にいったい誰がここに来たのであろうか。 誰かの見舞客が迷ってここに来てしまったという事なのであろうか。 望は開けられた扉を凝視してしまっていたのだから。 だがその直後、聞き慣れた声が聴こえて来たようで安心したようだ。 「望……? やっぱ、ここに居たんだな」 そう和也が望の名前を呼ぶ。 和也は望の事を見つけると笑顔で駆け寄ってくる。 「俺の思った通りってところかな?」

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