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ー友情ー40
「あのさ……望? この椅子に座っててくれないかな? ま、暫く横になっていても構わないんだけどさ」
和也はそう言うと、棚の中から注射器を取り出してくる。
「はい! 腕出して」
「別に俺は何処も悪くねぇんだけど?」
「ま、確かにな……。 だけどさ、アイツがここに運ばれてきて、しかも怪我して運ばれてきてるわけだし、未だにその治療は終わらない。 だから、心配して今集中できないって感じだろ? その精神状態のままで他の患者さんの命なんて守れるのか? それで、医療ミスに繋がったらそれこそ大変になるだろ? だからな、注射の一本位打っておいた方がいいんじゃねぇかな? って思ったんだよ」
その和也の言葉は本当に今の望の心を見透かされたようだ。 そんな和也に望は目を丸くしていたのだが、望はひと息吐くと、
「……流石だな」
「まぁな。 もう、数年、望と一緒いるのだから、望の気持ち分かっているつもりなんだけどな。 確かに桜井さんのこと心配だろうけど、今、望がするべき事は他の患者さんの事を治療する事だろ?」
和也は望に向かい笑顔を見せると背中をポンっと叩く。
「ああ、そうだったな……」
こう和也という人物は望の事をよく見ているのか心配しているのかそこのところは分からないのだが、そんな和也の優しさに安心した様子で、
「……ありがとう」
と小さな声で照れ臭そうに口にし、あまりにもの照れ臭さに望の方はパソコンの方へと視線を向けてしまうのだ。 それが望らしい行動なのかもしれない。
あまりにも小さな声だったのだが、和也はその望の言葉を聞き取るとクスッとし、午後からの準備の方に取り掛かる。
暫くして午後からの診察を終えると、
「ここの片付けとかって俺がやっといてやるから、お前は桜井さんの所に行って来いよ!」
「ああ、うん。 じゃあ、後は宜しく! 様子だけ見てきたら直ぐに戻って来るからさ」
診察室を出て行く望の後ろ姿に軽く手を振ると片付けを始める和也。
そして望の方は診察室を出て行くと外科病棟の方へと向かうのだ。
ナースステーションで雄介の病室を聞くと、足早に雄介がいるであろう病室へと向かう。 とそこの廊下に何故か人溜まりができていた。
それを見た望は不思議に思いながら遠目から覗くように見ていたのだが、近付くと、その人混みを掻き分け中心部へと向かうのだった。
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