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ー友情ー44

 望はかなり焦っていたようだ。だからなのか、仕事としてのパートナーである和也の存在を忘れていたらしい。  そして、二人は急いで雄介の病室へと向うと、そこにいた看護師に声を掛けるのだ。 「……で、容態の方は?」  と望は近くに居た看護師に聞いた筈だったのだが、声が聞こえて来たのは下の方からで、 「久しぶりやな……吉良先生……」  その声に反応し望は目を丸くしながら、その声が聞こえて来た方に視線を向ける。  今さっきの看護師の慌てぶりだと容態が急変したのかと思われたのだが、それとは逆に雄介が意識を取り戻したという事だ。そこで望は安堵のため息を吐く。  そして望はそんな雄介の声に安心したのか、 「なーんだ……そういう事だったのか。 なら、良かった……」  そんな望の様子に和也の方は気を利かせ、そこに居た看護師と一緒に雄介の病室を出て行く。 「スマンな……先生……また、病院も方に来てしもうて……」 「今回の事はしょうがねぇだろ? それに、もう、ここに桜井さんは来ないと思うしな。 安心してくれ、坂本さんだっけ? 坂本さんは自首したらしいからな」 「それ、ホンマかぁ!?」 「ああ……」  望は雄介の方に笑顔を向けるのだが、どうやら雄介の方は複雑そうな表情をしていた。 「今回の事に関しては、ただの俺のミスなんやって、アイツが自殺しようとしたから、止めに入ってたまたま腹を刺されたって訳なんやしな。 アイツは全くもって悪くもないし、そんなんで、アイツが捕まるんはおかしくないか?」 「それを、俺に言われても困るんだけどな……」 「あ、あー! スマン……スマンかった……あーせやせや、確かに先生には関係なかったんだっけな」 「明日、また刑事さんが来るって言ってたから、その時にでも刑事さんの方にその事を伝えればいいだろ? そしたら、その坂本さんっていう人は釈放してもらえるんじゃねぇのかな?」 「ああ! ほんなら、明日、刑事さんに話してみるわぁ!」  それと同時に望は深く一呼吸をすると、 「あ、あのさ……お前に一つだけ言っておきたい事がある。 あのな……今まで言えなかったんだけど……その……付き合ってもいいかな? って……」 「……へ!?」  突然、望からの告白に雄介の方は目をパチクリとさせながら望の事を見上げるのだ。 そりゃあ当たり前だろう。 だって今まで望からそんな素振りさえなかったのだから。 それと雄介からしてみたら望に告白した事さえも忘れていたのかもしれない。 だから驚いてしまったという事だ。 まぁどちらにせよ今の望からの告白に驚いたという事だ。 「あ、あぁ! だから、付き合ってもいいって言ってんだ! 恥ずかしい言葉を何遍も言わせんじゃねぇよ……」  最後の方は今にも消え入りそうな声で言う望。 そう告白というのは言う側も勇気がいる事なのだが、告白された側も返事をするのに勇気がいるもんだ。 時が経ち過ぎていると余計になのかもしれない。 「……それって、ホンマの事なんか!?」  そうまだ夢の中にでもいるような感じなのか雄介は目をパチクリとしながら望の方を見上げてしまっていたのだから。

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