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ー記憶ー46

「今の俺には言い訳なんて通用しないんだからな。 はいはい、布団はちゃんと掛けて、とりあえず寝るっ! 風邪の時には寝るのが一番の回復の道なんだしよ」  そう、これまでガミガミと言っていた望だったが、風邪だという事が分かったのか、それとも安心したのか急に優しい口調へと変わるのだった。 「まったく……体がこんなになるまで、よくほっといたよな?」  そう言いながら、望はタンスに入っている雄介のパジャマを取り出すのだ。 「洋服のままじゃ辛いだろ?」 「ええって……」 「ホントにお前は医者の言う事聞かねぇ奴だよな」  望は軽く息を吐くと、雄介の体を起こし、着ている服を脱がせタオルで体を拭いてからパジャマを着させていく。  その望の行動に、顔を赤くさせたのは雄介の方だ。 まさか恋人にそんな事をされるとは思ってもいなかったのであろう。 これがただ単に看護師さんかなんかに着替えさせてもらっているのなら、顔を赤らめることはないだろうが、恋人にされるのは恥ずかしいのかもしれない。 「よしっ! 後はゆっくり体を休ませるだけだからなっ!」 「明日はええとして、明後日からは?」 「そこは……お前次第だろ? もし、熱が下がらなかったら休みにしろよ。 もしダメそうなら俺が診断書出してやるからさ」 「スマンな……望……」  雄介は、その望の言葉に安心したのか、望へと向かい腕を伸ばす。 「なんだよ……」  そう望は一言言うと、雄介から伸ばされた手を取り、自分の頰へと持っていくのだ。 「望……好きやで……」

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