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ー記憶ー76

「ここが……ケホッ! ……火事になって……はぁ……はぁ……なった……みたいで……ゲホッ! その……防火シャッター……が……閉まって……」 「分かったって……もう! 喋らんでええからっ!」  雄介はそう望に告げると、望と雄介の前にある防火シャッターを見上げる。 「これ……かいな……? これを開けたら、他の所にも火が回ってしまうっていうからって、閉まってしまうなんてな。 まだ、中に人が居るって言うのに……」  雄介は自分の目の前にある防火シャッターを悔しそうな思いで叩くのだ。  火事が発生した時に閉まるようになっている防火シャッター。 被害が拡大しないようにと火事が発生すると閉まるようになっている。  このシャッターの向こう側には雄介の恋人である望が助けを求めているのに、またここで坂本の親子のように何も装備していないからって助けに行けないという悔しさで再び雄介はシャッターを叩くのだ。  もうあの時と同じ誤ちを犯したくはない。  しかも目の前にいるのは自分にとっては大事な人だから余計にだ。 「このままじゃ……坂本の時と一緒やんけ……」  そう雄介が一人呟いていると、再びシャッターの向こう側にいる望が苦しそうな声で、 「今……はぁ……はぁ……スプリンクラーが……ゲホッ! 作動……してる……」 「スプリンクラー!? それ、ホンマか!?」  望のその言葉に雄介は顔を上げ気持ち的に安堵の声を上げるのだ。

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