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ー天災ー19
こんなことを、恋人である望に、こうすんなり言えることではない。
そう、異動は異動でも、春坂市の近場ならいいのだが、場所は大阪の方になってしまっていた。
東京から大阪まで。
短いようで長い。
それでなくても今だって同じ屋根の下に暮らしているのに、全くもって望とは会えていないのに、更に違う土地へと行かなければならなくなってしまった。
もっともっと離れてしまうような気がする。
そう、今日はいつまでも雄介はベッドの上でゴロゴロと考え事をしていた。
起床時間になって雄介はそのまま眠れぬままで起きてしまったようだ。
仕事の方は後少しで終わる。
だがプライベートの方はまだまだ仕事が残っているという感じだ。
ホント、これから望とのことや異動のこと、どうしたらいいのであろうか?
とりあえず今日は夜中の出動もなく、引き継ぎ時間になって交代すると、雄介はロッカールームのベンチでぼーっとしていた。
こんなことがなければ、素直に、いや、寧ろ喜んで家に足を向けていただろう。 そして、溜まっているであろう家事をやっていたのかもしれないのだが、今日の雄介は足がなかなか動こうとしない。
だが、今日の雄介はそんな気分にはなれないようだ。
家に帰りたいのに、帰れない状態。
そんな中、雄介の同僚の坂本が声を掛けてくる。
「お前、まだ、帰らないのか?」
「ああ、まぁ……ちょっとな……」
「仕事は終わったんだろ?」
「そりゃ、まぁ……」
いつもに増して暗い声をしてそう答える雄介。
「まさか、昨日、命令違反をした事を未だに気にしてのか? あれはさ、結果的に人を助けたのだからいいんじゃねぇの?」
「……へ? あの事か? もう、そこは気にしてへんよ。 もし、その事で怒られるんやったら別にそこは構わへんしな」
その坂本の言葉に対しては寧ろ笑顔で話す雄介だが、いつもの笑顔ではないようにも思える。 実際、坂本の方はそんな雄介に首を傾げてしまっているのだから。
「じゃあ、なんだ?」
「こっちの話やし、気にせんでええよ」
「……でもな」
「大丈夫やって……もう、仕事に差し支えるような事せぇへんから」
「そっか……」
どうやら坂本は雄介の雰囲気に、もうこれ以上聞いてはならないような気がしたようで、そこで言葉を止めてしまう。
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