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ー天災ー25

 思わずその景色に見惚れていた雄介は、 「綺麗やんなぁ」 「な、綺麗だろ?」  先に来ていた望はそう答える。  という事は、望はここに来た事があるんだろうか。 それとも、この景色を見ていてそう答えたのであろうか。  雄介はそういう風に答えた望の顔を見つめる。  それに気付いた望は、 「ん? 何か俺の顔に付いてるか?」 「いやな……そういう風に言うって事は、望はこの景色を前々から知っておったんかな? って思うてな。」 「ここはもう何回も来てるからな。 って言っても仕事絡みだったけどさ。 特別なのはお前だけだから安心しろ」  そう、雄介の心を見透かされたような言葉に、雄介の方は目を丸くする。  まぁ、確かに望は医者なのだから人の心を見透かす事なんて簡単なのかもしれない。  フッと、雄介がテーブルに目をやると、望は一時間以上も待っていた筈なのに、ただコーヒーカップが置いてあるだけだ。 「え? なんも食べてへんかったん? 仕事の後やったらお腹空いてたんと違うん?」 「お前が絶対に行くって言ってくれてたからな。 それに、俺はお前程はお腹空かねぇんだよ。 ほら、基本的には体あんまり動かさないし」 「ま、そうなのかもしれへんど……。 ま、ええわぁ……とりあえず、飯にしようか?」  そう笑顔で言った雄介だったのだが、 「ってか、お前さぁ、何か俺に隠し事してないか?」 「……へ? してへん! してへん! なんもお前に隠し事なんかしてへんで!」  そう、雄介の方は焦ったように手と同時に首を振るのだ。 「ふーん……そうなんだ……。 ホント、お前って分かりやすい性格してるよな。 別に俺にも言えないような事なら気にしないんだけどさ。」

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