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ー天災ー30
恋人である望に隠し事とは一体どういうことなのだろうか?
まさか、雄介に彼女ができたとか!?
まぁ、確かに望は男だ。 女性ではない。 最初、雄介には女性だと間違われたけど今はちゃんと男性だと認識して付き合っているのだから。
もしそうならば全然自分的には、いいというのか覚悟していた事と言えば覚悟は出来ているのだけど。
でも雄介はそのことを望には話してはくれない。
望は気持ちが晴れないまま家へと向かう。
そう、さっき雄介に「用事がある」と言ったのは嘘だ。
突き放すように言ったら、その隠し事を話してくれると思ったのだけど、雄介は話してくれそうにもなかった。
きっとまだ望たちはお互いの性格をちゃんと把握できていないのかもしれない。
だから今は心の探り合いの状態だ。
『こうやったら!?』『相手はどう返してくるの?』きっとそういうやりとりで相手の性格を把握しようとしているのであろう時期だ。
一方、望に突き放されてしまった雄介は賑わう街を一人でただ歩いていた。
望とは喧嘩したわけではない。 ただ雄介が一方的に隠し事をしてしまったことで望から突き放されてしまったということだ。
雄介は色々なことを悩みながらさっき急いだ街を俯き歩く。
周りの人々が楽しげに会話を楽しんでいるのが聞こえてくる。 一緒に同僚と飲んだ帰りなのであろうか、騒ぎながら帰るサラリーマン。
夜の街を腕を繋いで歩いているカップル。
そうだ、本当だったら雄介だって望に隠し事さえしなければ今頃はあの恋人たちみたいに楽しい時間を過ごしていたのかもしれないのだから。
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