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ー空間ー4

 二人がボーとしていると外科診察室にはアナウンスが流れ、患者さんが呼ばれた。  その患者さんの名前には聞き覚えがあるような気がする。  和也もどうやら気付いたようで、望と視線を合わせると目をパチクリとさせていた。  今呼ばれている名前っていうのは、まさか雄介の名前ではないのであろうか。  確かに世の中には同じ名前の人がいるのかもしれないのだけど、この病院で登録している患者さんの名前の中には桜井雄介という名前の人は居なかったはずだ。 それとも新規の患者さんが雄介と同じ名前なのか? そこはまだ本人が診察室に来てないので分からないところだ。  二人は診察室のドアの方に視線を向けながら、その桜井雄介という名前の患者さんを待つ。  そしてそのドアを二人して凝視してると、ドアが開いた。 「よっ! って、二人して何してんねん」  やはりそこにいたのは望の恋人である桜井雄介だった。  望も和也と一緒にドアの方に視線を向けていたのだが、雄介いう事が分かると、そのドアからすぐに視線を離し、パソコン画面へと視線を向けてしまう。  きっと望の事なのだから、単なる照れ隠しであろう。 「望ー、久しぶりに会うのに、そりゃ、ないやろー?」  そう言いながら雄介は診察室にある椅子へと座る。 「何言ってんだよ……望の場合にはお前を前にしたら、ただ単に照れ臭いっていうだけだろ?」 「そないな事は分かってるわぁ」 「……って、何で、お前……ここに居んだよ。 さっき、メールした時にはここに来るって言ってなかっただろ?」  やっと顔を上げた望だったのだが、そんな事を言ってしまっている。 「しゃーないやんか……サプライズや! サプライズ! 何も言わんとここに来たら、望はどんな反応するんかなー? って思うてな」

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