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ー空間ー155

 雄介はチラリと望がいる方へ視線を向けると、望も後ろ手に手首を縛られている姿が目に入った。 しかも、ずっと犯人の一人に囚われてから望の体勢は変わっていない。  雄介は望のことばかり助けようと考えていたのだが、さっきの白井の話によると、犯人はもう二人いると言っていたのではないだろうか。 しかも、その犯人たちは操縦席の方に向かったとも。  この飛行機を乗っ取って、一体犯人たちは何をしたいのかが分からない。 そして、もう一つ雄介が知りたい情報は操縦士と副操縦士の安否だ。  操縦席というのは扉の向こう側にある。 その扉からでは操縦席の方は確認できない。 寧ろ、その扉を開けなければ操縦席の様子を確認することができないと言った方がいいのかもしれない。  もしかしたら、もう雄介の中では望だけでなく乗客全員が助かる方法を考えているのかもしれない。 だって、あんな言い訳をするくらいなのだから、白井は絶対的に乗客全員を助ける気はないと考えた方がいいかもしれない。 多分、飛行機はこの犯人たちの犯行によって乗っ取られているから、自分たちだって助かる可能性がない。  そして何十分が過ぎただろうか。 やっと雄介に縛られていた紐が白井の手によって解かれた。  だが、雄介はまだ後ろ手にしておくことにする。 今度またいつ犯人が見回りに来るか分からないからだ。 その時に犯人に気付かれたら、また縛られてしまうのは間違いないだろう。 ならば、犯人たちに紐を解かれたのを見せない方がいいかもしれない。  とりあえず、警察である白井と作戦を立てることにした雄介。 やはり、そこは一般人とは違い、何か知識があるのかもしれないと思ったのだろう。  雄介は望を優先に助けたいと思っているのだが、望の隣には犯人の一人がいる。 真正面から望を助けようとしても、すぐに犯人の手によって望を押さえられてしまうのは間違いない。  とその時、急に機内が大きく左右へと揺れ動いた。 不意打ちだったためか、乗客も体が左右へと揺らされ、みんながみんなバランスを崩し、隣にいる乗客や通路側の人間は投げ出される者もいたくらいの大きな揺れだったのは間違いない。

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