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ー空間ー211

 望は寒かったのだろうか?  昨日、雄介は確かに望の体を仰向けに寝かせたはずだった。 しかし、今は体を丸め、雄介の方向に向けて足を曲げ、まるで猫のように寝てしまっていた。  しかし、この三日間は過ぎるのが早かった気がする。  望と一緒にいられるのは今日で最後だ。  また明日からは恋人がいない生活が始まる。  確かに恋人がいない日々に慣れたはずだったが、この三日間でその気持ちがまた戻ってきてしまったようにも思える。  どうして神様はこの二人にこんなにも試練を与えるのだろうか? 恋人たちには幸せになってほしいと思っているはずなのに。  例え男同士でも恋愛感情はある。 それに男女カップル以上に恋人になる前にはたくさんの試練があるというのに。  男女関係でもカップルになる前には悩むことがあるかもしれないが、同性同士の場合にはそれ以上に悩むことになる。 「相手は本当に同性を好きでいてくれるのだろうか?」「将来のことは?」「相手の本当の気持ちは?」と、悩みは本当に多い。  ほとんどの場合には同性を好きになっても玉砕覚悟で告白するしかないのかもしれない。 それでもカップルになれば、それなりに絆は深いのだろう。  雄介はふと望の寝顔を見つめる。  今はすごく可愛い顔をして寝ている望。 まさか雄介が本当に好きになった人が恋人になるとは思っていなかった。  とりあえず今日は望と一緒にいられる最後の日。 もう望とこうしている時間がほとんどない。  しかも、自分たちがしている仕事は互いに忙しい。 雄介はレスキュー隊員、望は医者で、本当に土日や連休なんて望める仕事ではない。 ただ、二人がしている仕事は共に人を助ける仕事でもある。 そこには誇りを持っているのだから、それはそれでいい。  だからプライベートの方が後回しになってしまうのは仕方がない。  雄介はひと息つくと、一階へと向かう。

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