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ー空間ー213

 頭を俯けて頭を振り、今まで考えていたことを抹消しようとしてみるのだが、やはりそれは無理なようだ。  おかしいくらいに、今日の雄介の頭に浮かんでくるのは望のことばかりのようだ。 望は死んでもいないのに、この三日間の思い出と出会った頃から今までの記憶が雄介の頭を過ぎってしまう。 「望は今……俺の側に居るやんか。 会おうと思えば会えるのに……」  今まで雄介は望のことでこんなに切ない気持ちになったことはなかったのに、なぜか今日の雄介はいつものように明るい気持ちではいられない。  雄介がそう考え事をしている時、望はもう起きていてリビングのドアのところでその雄介の様子を伺っていた。  本当に雄介があんなに悩んでいたなんて今まで気付かなかった。 望自身も、雄介を好きになってから雄介には色々と気付かされた。  恋人からの優しさ、好きな人を守る大切さ。 雄介は本当に望に尽くしてくれたと思う。 望がわがままを言ったって、いつも笑顔でいてくれる雄介。  だから今回の望の行動は、今まで雄介がしてくれたことへの恩返しだったのかもしれない。 今まで雄介に対して素直になれなかった望。 しかし、今回は雄介の前だけでは素直になっていたつもりだ。 そこに雄介は気付いてくれているのだろうか?  そして望は、自分が結構わがままだと自覚している。 だから雄介が嫌気を差してきているのではないかと心配だった部分もある。  あの雄介が異動になって違う土地に行ってしまった時にはあまり気にもしなかった。 次に雄介と別れる時にはみんながいたから、そこもあまり悩むところでもなかった。 しかし、今回は違う。 二人だけでの別れ。 だからなのか、悩んでしまっているのかもしれない。  今までのことを考えると、今回は二人だけの世界なのだから、いつも以上に別れるのが辛いのだろう。  望はリビング横の壁に寄りかかる。  気付いた時には、目には涙が溢れてきていた。  今まで自分はこんなに弱い人間だったのだろうか?  いや、少なくとも雄介に会う前はこんなに弱い人間ではなかったと思う。  人を好きになることは、こんなに切なくて悲しいものなのだろうか?

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