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ー雪山ー54

 あくびをしながらリビングを出て行く雄介の姿を目で追う望。  そして、完全に雄介がリビングを出て行くと、大きなため息をつく。 「今日はせっかくの休みなのにな……俺が怪我しちまったから、どこにも行けねぇし」  望はテレビを半分見ながらも、半分は雄介の様子を伺っていた。  雄介が部屋の中にいると、テレビなんかより雄介の様子が気になるに決まっている。  たとえ好きなテレビ番組を見ていても、雄介が部屋にいるというだけで集中して見られるわけがない。  いくら相手のことが好きだとしても、趣味は違う。  一人で見ているなら構わないのかもしれないが、二人いるのだから相手の様子が気になってしまうのは当たり前だろう。  確かにここは望の家なのだから、主導権は望にある。だが雄介がいたんでは自己満足だけでは済まない。  今は一人ではないのだから、相手の気持ちも汲まないとならないだろう。  でも雄介の性格上、そんなことは気にしないのかもしれない。  前に望は雄介に「見たいものはないのか?」という質問をしたような気がするのだが、「望が見たいもんでええで……」と言われたような気がする。  となると、雄介の好きな番組というのが分からない。望の方は無意識に雄介に自分の趣味を教えているのに、雄介からは何も聞いていないような気がする。 「……って、俺だけが、アイツの趣味知らないのはさ。アイツの関係で知ってると言えば、性格と洋服の趣味くらいなもんか?」  やはり、それだけでは足りないような気がする。恋人同士なのだから、もっと相手のことを知りたいと思う。  だが望の性格上、望から雄介にそんなことを聞けるわけもない。  それに気づいた望は、大きなため息をつく。

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