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ー波乱ー65
「雷……ん……ですか?」
裕実は布団から再び顔を出すと窓の外を眺める。
「僕、雷って嫌いなんですよね……。 あの大きな音が嫌いなんですよ。 大人になっても雷が嫌いって恥ずかしい事ですよね?」
「そんな事はないやろ?」
そう雄介は裕実の話に耳を傾ける為に裕実の方へと視線を向けると薬のせいなのであろうか? 額からは物凄い大量の汗が吹き出てきていた。
「ほ、ホンマにお前……大丈夫……なんか? 額からめっちゃ汗出てきておるみたいねんけど……」
本当に心配そうに雄介は裕実の顔を覗く。
「だ、大丈夫ですから……はぁ……ん……雄介さん……心配しないで下さいよ……。 本当に本当に……大丈夫ですからね……ん……」
「せやけど……」
雄介の方はその裕実の言葉に眉間に皺を寄せ切なそうに裕実の事を見つめる。
「大丈夫ですから……そんな顔しないで下さいよ……それに、もうすぐ……キャッ!」
そう裕実が言葉を繋げようとした直後、空一面に光りが走り始め雷特有の音を鳴らす。
まだ鳴り始めたばっかりだったのだが本当に裕実は雷が嫌いなのであろう。 声を上げて耳まで塞いでしまっているのだから。
そんな裕実を見て雄介は何か自分に出来る事はないのか? というのを探ってみるのだが何も見当たらないようだ。
これが、もし望なら抱き締めて上げる事が出来るのだが雄介からしてみたら裕実は親友でしかない関係なのだから流石にそこまで出来ない。
望達はあんなに早く終わる手術だって言っていたのに、まだまだ望達が帰って来る気配は無さそうだ。 そこに雄介の方はそろそろ困り始めてきている。
そうこうしているうちに再び空が光り音を鳴らす。 その度に裕実は目を瞑って両手で耳を塞いでしまっていた。
まだまだ小さい音でも裕実にとっては怖いのであろう。
「裕実……! スマン! 見てるこっちが、我慢出来へんわぁ。 和也がどういう意味で俺に裕実の事任せたんかっていうのは分からへんけど、今、考えておって分かったような気がするわぁ。 和也の奴……二回程、望の事抱いたって言ってたやろ? せやから、今回はお前の事を俺に託したんとちゃうんかな? せや、多分、そういう事なんやと思うで……その……和也もええって言っておったんやし、俺に任せてくれたらええしな。 あ、だけど……下心とか言うんやなくてな……俺は普通にお前の事が心配なだけであって、放っておけんっていうんかな? それに、キスとかもせぇへん……ただイかせて上げるっていうだけでええって思うねんけど……あ! カーテン閉めたらええんか? それとも、一人でやるか?」
「雄介さん! 本当にありがとうございます! 本当にっ……僕の方は大丈夫ですからね……和也さんが来るまで……が、頑張りますから……っ……」
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