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ー過去ー180
「な、望……それって、俺ん事試しとる? それは、いったい、どういう意味で試されておるんやろ? 看護師や医者になるって事か? それとも、望に対しての気持ちの事なんか?」
その雄介の質問に、望はため息を吐くと、
「俺はお前の事、試してなんかいねぇよ。逆に今何でお前はそういう風に思ったんだ? しかも、俺はお前と俺の関係の事なんか一言も言ってねぇよ。恋愛とか関係無しで仕事の事を言ってんだ。だから、それが中途半端な気持ちなんだって言ってんだよ。今のお前にはまだ医者や看護師になるなんて資格はない」
「せやから、何で望はそう医者や看護師になるって事を反対するんかなぁ? って思っておるんやけど?」
「本当に分からねぇ奴なんだな。さっきから何度も言ってるんだけどさ、その中途半端な気持ちがダメなんだって言ってんだよ! その中途半端な気持ちが無くなってからでいいって言ってんだからな」
しかし、何回この事について話し合いをしてきただろうか。そこは覚えていないが、何度話をしてきても望は何故か反対をしていた。
雄介はため息を吐くと、
「もう、この話の事については止めようや……また、前回と同じような事になってまいそうやしな」
「お前が二度と同じ事を繰り返さなければな」
「それって、どういう意味や? 喧嘩になってまうって事か? それとも、俺が医者か看護師になるって事か?」
「……そこは両方だろ?」
「ホンマ、俺、頭が悪くてスマンな」
「そんな事は俺は言ってねぇよ。お前は人の意見に流され過ぎだ。そして、人と比べるのは止めろ……どうせ、お前の事だから、今の発言は和也と比べたんだろ? お前って、自分に自信が無いって思ってるんだろうな。だから、直ぐに人と比べちまって、自分より凄い奴を見ると自分には出来ないって思っちまう。後は人に合わせようとするのは、自分が嫌われたくないから、そうしちまうんだろうな。雄介って何気に弱い男だったんだな」
雄介はその望の言葉に目を丸くすると、
「望の言う通りなのかもしれへんな。自分に自信が無いのかもしれへん」
「なら、これからは自分が思った通りに動いてみろよ。俺はどんなお前でも付いて行くからな。医者や看護師になりたいって事はお前が初めて決めた事なんだろ? きっと、消防士になりたい、と思ったのは親が敷いてくれたレールの上を走ってきちまったからっていうのもあるのかもしれねぇしさ。でも、小さな頃からの夢でもあったって事かな? だけど、無意識に植え付けられた夢だったって事もあるのかもしれねぇしさ。それは俺もそうだから」
「だから、本当に医者や看護師になりたいんだったら、自分の意思で突き進めよ。人に何て言われようと我が道を進んだ方がいいんじゃねぇのか? 人生っていうのは一度しかねぇんだ……自分が生きたいように生きる方がいいんじゃねぇのかな?」
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