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ー天使ー14

 望は、本当に厄介な人物にこんな場面を見られてしまったと思いながら溜め息を吐き、面倒くさそうな顔を裕二に向けて、昨日あった出来事を話し始めた。 「なんだ……そういうことだったんだね。私はてっきり、望と雄介君の間に子供ができたのかと思っていたよ」 「って、どう考えても雄介と俺の間に子供ができる訳ねぇだろうが! 医者じゃなくても一般常識的に考えても男同士の間に子供ができる訳がねぇだろー、まったく、何、訳分からねぇこと言ってんだか……」  望は、裕二のくだらない冗談に溜め息をつきながら、琉斗を託児所へ預けた。その後、午後の仕事に向けて自分の部屋へ戻って行く。  部屋に戻った後も、望はイライラを顔に出していた。その様子に和也が気付かないはずもない。  触れてはいけないと思いつつも、和也は相変わらずの満面の笑顔で望に近づいてきた。 「何があったんだ? すっげぇ、イライラオーラを出してんですけどー!」  その和也の言葉を無視する望。だが、和也はさらに望の口から何かを引き出そうと誘導尋問を始めた。 「確か、望はこの時間、琉斗を迎えに行ってたんだよな? やっぱりさぁ、望には子供の面倒を見るのは無理で……言うことを聞かない琉斗君にキレてるとか?」 「そんな訳ねぇだろー。雄介の甥っ子はいい子だからなぁ」 「んじゃ、雄介の甥っ子のことじゃねぇんだな……? 他に望がイライラするって言ったら?」  和也は指先を顎に当て、考え込む。  しばらくして何か思いついたのか、静寂の中でポンと手を叩いて言った。 「分かった! ……望がイライラするって言ったら、望の親父さんのことだろ!? 望がそれ以外でイライラするのは、俺か、雄介と喧嘩した時くらいだし……。でも今日は、望から雄介と喧嘩したなんて聞いてねぇからな……ってことは親父さんと何かあったとしか考えらんねぇよな?」  望は和也のその推理に溜め息を漏らし、机を両手で強く叩いて和也に向かい言った。 「ホント、お前は相変わらずだよなぁ。どうして、お前は人の心の中に土足で踏み入れてくるかなぁ!?」 「それは前にも言っただろ? それは望のイライラしてるものを取り除くためだってな……そうでもして聞かないと、お前は心の中にあるモヤモヤを吐き出すことができないって言っただろうが……」

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