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ー天使ー106

「うん……」  雄介は、琉斗が美里と一緒にいたいのだろうと悟ったのか、そう言った。しかし、どうやら琉斗の返事の仕方からは、どこか寂しそうな様子が伺えた。 「どないしたん? もう少しでママと一緒に生活できるんやで……」 「でも……でも! 雄介おじちゃん達とまた離れなきゃならないんでしょ?」  どうやら琉斗は、本気で望と雄介から離れたくないらしい。 「あ、んー、まぁ、そうやねんけどなぁ? せやけど、琉斗はやっぱママと一緒に居たいんやろ?」 「うん……だけど、雄介おじちゃん達とも一緒にいたいかな?」  そう言って、最後の方は小さな声になる琉斗。  きっと琉斗なりに、本当は言ってはいけないことなのだと思っているのだろう。 「……へ?」  その琉斗の言葉に、裏声を上げる雄介。そりゃ、そうであろう。まさか琉斗がそんなわがままを言うとは思っていなかったからだ。 「まさか、琉斗はママと俺と望兄ちゃんと一緒に居たいってことを言いたいんか?」 「ダメー?」 「ダメー、やないんやけどなぁ?」  流石の雄介も、その琉斗のわがままに対し困惑している。  今まで、琉斗はあまりわがままを言わない子供だった。しかし、こうしてたまに爆弾級のわがままを言って雄介を困らせることは、これまでにも多々あったのだ。  確かに琉斗は普段、わがままと言えるようなことをほとんど言わない。しかし、こうして大人を困らせるようなことを言う時がある。きっと本人は意識して言っているわけではないのだろう。 「な、琉斗……俺達はこれからも琉斗と一緒に居るのはええねんけど、ママはどうなんやろな? とりあえず、ママに聞いてからにせぇへんか?」 「うん! 分かった! 今度、ママに会った時に聞いてみるね」  とりあえず、琉斗の最大級のわがままをどうにか切り抜けた二人。そんな琉斗のわがままに、二人は同時に安堵の溜め息を漏らした。  三人はお風呂から上がると――。 「とりあえず、雄介……先にテストやってから寝ろよなぁ」 「せやったな。そこは約束やったしな。ほんなら、望……琉斗のこと寝かせておいてくれるか?」  そう言って、雄介が琉斗のことを望に任せようとした時、何故か琉斗の姿はリビングになかった。

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