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ー天使ー135
「ま、ええか。ほな、望……帰ろうや」
そう言いながら雄介は立ち上がる。しかし、彼の表情はいつもと違い、真剣な目で望を見つめている。
「あ、え……? あ、おう」
望は雄介の様子に気付き、少し戸惑いながらも返事をする。普段と違う雄介の雰囲気に、どう反応すればいいのか分からないようだ。
その様子を見ていた和也が、軽い調子で口を挟む。
「どうしたんだ? 雄介……なんか、いつもと違う感じがするんだけどよー」
雄介を見上げながら、いたずらっぽく尋ねる和也。
「別に何でもあらへんで……」
雄介はそっけなく答えるが、どこかぎこちない。
「そうか? いつもと違う気がするのは、俺の気のせいか?」
「き、気のせいやろ?」
雄介は目を逸らしながら答えるが、その動揺は明らかだった。
「隠すようなことでもないだろ? なんで、いつもと違うんだよー?」
和也の追及に、雄介は観念したようにため息を吐き、和也の肩に腕を回して小声でささやく。
「せやから、さっき言うたやろ? 今日は久しぶりに俺と望が二人きりになれるって。だからやなぁ、今日はかっこいい俺を望に見せたろうと思うてな。せやから、ちょっと決めた目を向けてただけなんやって」
雄介の言葉を聞いた和也は、吹き出すどころか堪えきれず、腹を抱えて笑い始めた。
「お前っ……!」
「ちょ、笑うことないやろー! しかも腹まで抱えてー!」
「大丈夫だって! そんな顔しなくても、望は雄介のこと好きなんだからさ!」
「そない大きい声で言わんでもええやんか! むっちゃ恥ずかしいしー!」
「いいじゃねぇのー? 今日は二人きりなんだからさ」
「さっきっから、二人きり二人きりって……言うなやぁ。ホンマ、久しぶりに二人きりやから、意識してまうやんかぁ」
雄介はそう言いながらソファに腰を下ろしたが、その隣には望がいる。何をどうすればいいのか分からない様子で、目線を落とす。
ため息をついた雄介が、独り言のように大きな声で言った。
「アカン! もうアカン! ホンマ、望! ゴメンなぁ!」
その突然の謝罪に、望はきょとんとしながら雄介を見つめる。そんな二人の姿に、和也はさらに笑いを堪えきれず、肩を揺らしていた。
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