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ー決心ー9

「ほな、部屋に入ったら、飯作らなきゃアカンな。ホンマ、スマンなぁ、飯が遅くなってもうて……前んの時やったら、俺が休みの日に夕飯はとっくに作っていた時間で望が帰って来たら、直ぐに飯が出来たんやけど……」 「気にすんなよ」  望はそう言いながら車から降りて行く。  その望の後を追うように雄介も車から降りて二人は家の中へと入って行くのだ。  だが雄介は部屋に入った途端に何か違和感を感じたようだ。  今日は誰も帰って来ていない筈なのにリビングの方からは明かりが漏れている。  雄介が先に部屋に入った筈なのに、玄関から少し遠い場所にあるリビングの明かりが点いているのはおかしい。 「望……ちょっと待っててな」  雄介の後に部屋に入って来た望を玄関で待たせると、雄介は警戒するようにゆっくりとリビングがあるドアへと向かって行く。  だが雄介が思ったような雰囲気はなかったようだ。  リビング内は特に荒らされた感じもなく、いつもと変わらない景色のリビングであった。  だが部屋は一階だけではない。  雄介は階段を登り二階へと向かう。  そんな雄介の後ろ姿に望は溜め息を吐くと雄介に足止めされたのにも関わらずリビングへと向かう望。  望がリビングに入ってから、暫くして雄介はリビングへと息を切らせながら入って来るのだ。 「なんや、リビングに居ったんかいなぁ。めっちゃ焦るやんか。さっき、望に玄関で待っとってって言うておいたのに二階から降りてきたらいないし」 「別に、お前が思っているようなことは起きてないと思うぜ……」  その望の言葉に雄介は目を丸くしながら望の事を見つめる。 「どないして、分かったん?俺が『泥棒が入ったんじゃないかと思って、部屋の中を走り回ってた』ってこと」 「やっぱりかぁ。そんなことだろうと思ったぜ。まぁ、俺が電気つけっぱでお前のことを迎えに行ったのが悪かったんだけどな」  その望の言葉に再び雄介は目を丸くし、そして望の言葉の意味を考え始めるのだ。

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