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ー決心ー33

 そして望は和也との部屋へと向かうと、今日は既にそこには和也の姿があった。 「おはよう!」  そう和也はパンを口にしながら望に言う。 「ああ……」  望は和也に向かい、雄介の前とは違う素っ気ない態度を取ると、鞄を自分の机の上へ置き、上着を脱いですぐにロッカーへと向かう。  確かに望は和也に対して素っ気ない態度を取ることが多いが、今日の望はいつも以上に素っ気ないように感じたのは気のせいだろうか。  和也はそんな望に首を傾げながらも、最後の一口になったパンを牛乳と一緒に口の中へ放り込み、一気に飲み干す。  そしてロッカールームから出てきた望を見上げると、 「やっぱりさぁ、望は雄介と一日以上離れるのが寂しいんだろ?」  そう確信を突くような和也の発言に、一瞬、望は目を丸くしたが、和也にバレないようにいつもの表情に戻す。そして、和也の前のソファへ腰を下ろした。 「別に……今までだって、そんなことしょっちゅうだったんだから気にしてねぇよ」 「だけど、前とはちょっと環境が違うだろ? とりあえず、ここ一カ月は雄介とお前は毎日のように夜一緒に居たわけだしさぁ。その生活に慣れちまったら、寂しいんじゃねぇのか?」  確かに和也の言う通りなのかもしれない。  雄介が仕事を辞めてから、今までずっと夜は二人一緒だった。だから今日はいつも以上に寂しいのかもしれない。  それは朝、家を出る時から感じていた。望が自ら雄介に向かいキスをすることは滅多にないのに、今日は自ら雄介にキスをしていたのだから。 「そんなことはねぇよ……」  だが、相変わらず素っ気ない態度の望に、和也はクスリと笑うと、 「まぁ、そういうことな」  そう言い、一人で納得しているらしい。  望は溜め息を一つ吐くと、話を変えるために、昨日雄介から聞いた歩夢の話を和也に話し始める。 「なぁ、歩夢がまださぁ、雄介のことを好きって言っててさ。昨日、雄介はどうやら学校の帰りに歩夢に捕まったらしいんだよな」

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