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ー決心ー72

 しかし、この繁華街の中、再び似たような会話が望の耳に入ってきてしまう。  今度は会話だけでなく、望たちに近づいてくる女の子たちがいた。  望や雄介からすると、彼女たちは少し年下なのかもしれない。身長は望より少し低いくらいで、体型は普通より細め。明らかに自分のスタイルに自信がある様子の二人が、望たちに話しかけてきた。 「ねぇ、私たちと遊びに行かなーい?」  その言葉に、雄介は望に視線を向ける。望は明らかに不機嫌そうな顔をしていた。 「行かへんよ。俺ら、暇ないしなぁ」 「大抵の人はそう断るのよね。ねぇ、遊ぶって言っても大人の遊びって言ったらどうする?」  彼女たちは、よほど自分たちの容姿や体型に自信があるのだろう。上目遣いで雄介の顔を見上げてきている。 「アホか!ホンマに暇が無いんやからなぁ。これから、携帯取りに行かなきゃアカンし」 「そんなの時間までに取りに行けばいいんでしょう。お兄さん……体つきもガッチリしてて、きっと、アッチの方も凄いんでしょうね?」  その言葉に雄介はムッとした表情になると、 「ホンマにしつこい奴やんなぁ。俺はそういうことに興味ないしな」 「そうなの?って、まだまだ二十代後半くらいでしょ?そんな訳ないんじゃない?」 「ホンマにホンマやって!」  流石にこれほどしつこい相手に対しても、雄介は望との関係を明かすことはできないだろう。どうにかして彼女たちから離れたいところだが、このままではなかなか諦めてくれそうにない。  雄介がふっと望の方を見ると、どうやら望ももう一人の女の子に声をかけられているらしく、困ったような苦笑いを浮かべていた。  この状況に、雄介は再び溜め息をつくと、望の手首をつかみ、人混みをすり抜けながら走り出した。  もう何を言っても、あの女の子たちから離れることはできないと思ったのかもしれない。  『逃げるが勝ち』という言葉があるが、今まさにその言葉がぴったりの状況だ。  雄介は彼女たちから逃げるため、無我夢中で走り、気づいたときにはビルとビルの間にある隙間にたどり着いていた。

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