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ー決心ー111
「今はまだ机に向かっての勉強だけだろうし、学校には行っておいた方がいいかもな。 遅れちゃならないとこだしよ」
「ほな、そうするわぁ」
そう雄介が笑顔で答えたのだが、望は急に顔を俯け赤くしてしまっていた。
そんな望に雄介は突っ込める訳もなく、どうしたらいいのか分からず瞳を宙に浮かばせている。 当然、この二人の間には沈黙が流れていた。
だが、その沈黙を破ったのは望で、望はいきなり雄介のことを見上げ、横の位置から雄介の肩へ腕を回すと、望自ら雄介の唇へ唇を重ねる。
一瞬、雄介は何が起きたのか分かっていなかったのだが、望が唇を重ねてきたのが分かると、雄介も望の肩に腕を回し、さらに唇を重ねる。
雄介は今まで肩に力を入れていたのだが、その力を抜き、唇を離すと、軽く息を吐く。
「良かったわぁ。 望が帰って来てくれて、ホンマ、ここ二日、望のことが心配で心配で仕方なくてな。 望がしている仕事は不定期休みで、今回みたいな事故が起きれば帰って来れないと分かっておっても、ここまで帰って来ないと、ホンマ心配やったんやって」
「それなら、今まで俺は毎日のようにお前のこと心配してたさ。 お前の方が危険を伴う仕事なんだぞ。 だから、余計に心配だったんだよ」
「ぅん、そうやな……今回のことで、よーく分かったわぁ。 望の事をいつも心配させておったんやなぁーってな」
「ああ……まぁ、そういう事だ」
望は今まで自分が言っていたことが、気恥ずかしくなったのか席を立ち上がり、どこかへ向かおうとしている。
「望、どこに行くん?」
「ぁ、ぅん……そうだな……トイレにかな?」
何でか望は動揺しているようにも思える。
だが、雄介はそんな望に気付いたのか気付かないのか、普通の返答をするのだ。
「そうやったんか……ほな、行ってきぃ」
望はリビングを出ると、何故か一息吐く。
最近の望は雄介の前では少しずつ変わってきているのだが、フッとした時に自分が言っていることを思い出すのかもしれない。 そんな時、顔を赤くしたり恥ずかしくなってしまったりしているのであろう。
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