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ー平和ー59
混雑していた銀行内は突如強盗犯達により騒然となる。
確かに今まで色々とあった望と裕実だが、こんなことには一度も遭遇したことはなかった
。 どうしたらいいのか分からないようで、ただただその場に立ち尽くす。
これが、もし雄介なら助かる方法を探すかもしれないのだが、裕実と望では何も出来ない。
強盗犯達は一億もの大金を鞄に詰めていている間、目を光らせ周りに居る人達が怪しい動きをしないか見張っているのだが、その直後、外ではサイレンの音を響かせてパトカーが来たようだ。
銀行内にいる誰もが、体を震わせている中、もう一発の銃声が銀行内に響き渡る。
その直後、銀行内に女性の悲鳴が上がるのだ。
「誰が、警察に通報したんだか分からないが……俺達が無事に金を持って出れるまでは、ここに居る全員に人質になってもらうからな!」
そう犯人の一人が声を荒らげると、犯人の仲間、二、三人がロープを手に持ち、一人一人の手首と足首にそのロープを巻いていくのだ。 そして銀行内に居た人達は一カ所に集められる。
さっきまではバラバラの場所に居たお客だが、今は一つの場所に集められたことで窮屈に感じる位だ。
これから、どれ位の時間、飲まず食わずで銀行内に望達は監禁されるのであろうか。
望はそんな状況に溜め息を漏らす。
今日は和也と雄介までも家から追い出して裕実の提案で、望は家で雄介の為にチョコを作る予定だったのだが、今は強盗犯によりそんな貴重な時間さえも失われてしまった。
いや、そう思っているのは望だけではないだろう。 今この場に居る人達、誰もがそう思っているのかもしれない。
そんなことを思っていると、犯人達が再び声を上げ、
「ここに居る全員! 携帯を出せ!」
そう声を荒らげる犯人。
今は殆どの人が携帯を持っている時代だ。 携帯を使ってここで起きている事を携帯を使って流されても困るとも犯人は思ったのであろう。
当然、望も裕実も犯人達にその携帯を渡し、これで外との通信が一切出来なくなってしまった。
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