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ー平和ー69
雄介が自分の目を疑いたくなるのも無理はないであろう。
そこに倒れていたのは、雄介がよく知った人物であったのだから。
「望? 望……! はぁ? え? ちょ、どうしたん!?」
雄介は血溜まりの中で倒れている人物を叫び声に近いような声で呼ぶのだが、全く反応がない。
そんな冷静ではない雄介に気付いたのか、和也の方は冷静にこの状況を判断したのか、ゆっくりと雄介の隣りへと腰を下ろし。
「とりあえず、望は大丈夫なんだろ? 銃で撃たれたんなら、早く止血はしねぇと……」
和也はズボンのベルトを外すと、撃たれたであろう右足の太股にそのベルトを回し応急処置程度ではあるのだが、止血を施していく。
「とりあえずは止血はしたよ。 後は救急隊員に任せようぜ。 雄介、望は大丈夫だからさ……今は、銃で撃たれて気を失っているだけだから……な?」
和也は雄介の肩を軽く叩き雄介のことを少し望から離れさせると、雄介に笑顔を向けるのだ。 だけど和也だって冷静に保っていられるのが精一杯のようだ。 だが雄介のことを思うと、冷静でいた方がいいと思っているからこそ、冷静で居るだけだ。
雄介の方もそんな和也に冷静さを取り戻したのか、
「せやな!」
といつもの笑顔となって、和也へと笑顔を向けるのだ。
「とりあえず、望は大丈夫そうなんやけど、裕実の方は、どないしたんやろ?」
雄介は裕実の存在を探す為に辺りを見渡す。 周りは騒がしいままだが、確かに雄介の言う通り裕実の気配は全く無い。 望は犯人に銃で撃たれてしまいここにいるのだが、裕実の方は居ない気がする。
「……へ?」
雄介にそう言われて、その場に立つ和也。
確かに今まで望のことで頭がいっぱいだったのだが、雄介にそう言われて今度は裕実の事が心配になったのであろう。 和也は必死になって四方八方にと視線を巡らせるのだが、本当に裕実の姿が無いように思える。
「え? はぁ!? って、どういう事なん!? 望は居てんのに、何で裕実は居てへんのや? あのメールからすると、今日は望と裕実は一緒に行動してるはずやろ?」
「ああ、多分……。 雄介、ゴメン! 俺、裕実探しに行って来るわぁ。 こんなに人が居るんじゃ、どこに居るのか分からないからさ。 望は救急車で病院に運んでもらえれば大丈夫だと思うからな」
和也は雄介にそう伝えると、裕実を探す為に人混みの中へと消えていく。
その直後、望は救急車で春坂病院へと運ばれ手術室に入るのだ。
雄介が一人病院で待っていると、ポケットに入れておいた携帯が震えメールが来たことを知らせてくる。
「……和也からか」
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