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囚愛Ⅱ《雅side》1

今年は君に、11本目の白い薔薇を―… 高3になったある日の出来事。 「ねぇ雅、お願いがあるんだけど」 「ん?」 久しぶりに学校にきた人気バンドJEES(ジース)のヴォーカルで同級生の帝真竜(テイマリュウ)が俺に話しかけた。 インディーズだけど新曲はいつもTOP10にランクインしてるすごいバンド。 「学園祭でさ、JEESのライブをやるじゃん?その全15曲の振り付けを考えてうちのダンス部の3年生と踊ってくれないかな?」 「え?」 「うちのダンス部、全国1位とったしさ、アピールしたいんだって」 確かにうちのダンス部は毎回全国5位以内に入っている。 俺はエリックといる時間を大切にしたいのと、三科雅彦とソフィア・フローレスの息子だとバレないように過ごしたいからダンス部とは関わっていないのに。 「でも俺はダンス部じゃないよ?」 「ダンス部のみんな、雅の振り付けが好きなんだって。俺も雅が考えてくれたサビだけ踊りたいし、ダメ?」 そう言われたのは5月。 そして文化祭は9月。 夏にU-18の大会もある。 確かに振り付けを考えるのは楽しい。 でも団体の振り付けを考えたことなんて無いし…スケジュールがハードだよなぁ。 「ダンス部の先生が考えた振り付けじゃダメなの?」 「ダンス部の皆は、雅を尊敬してるから最後に思い出作りたいんだって」 「そうなんだ…じゃあ、やってみようかな」 俺も最後ぐらいはダンスが好きな同級生と思い出を作りたいと思った。 JEESのセットリストをもらい、帰宅してから音楽を聴いて振り付けを考える。 音楽、歌詞を理解してもっといい振り付けを考えたいと思った。 歌詞の意味、この時の心情が知りたい。 「エリック、毎週金曜日は家に帰らないで、そのまま学園の寮に泊まるから。竜と打ち合わせしたくて」 「打ち合わせ?」 「そう。土日は寮にいるみたいでさ。実は―…」 俺はエリックに文化祭の話をした。 エリックはとても嬉しそうな顔で俺の話しを聞いてくれた。 「お友達と思い出を作る。最高ですね。夏にはU-18の大会もありますし、忙しいとは思いますが応援しています」 「ありがとう」 JEESの歌詞は全て竜が書いている。 基本的にバンドサウンドでバラードは1曲しかない。 歌詞を知れば知るほど振り付けが思い付く。 より一層、最高のものになっていく。 そんな生活を続けて2週間。 文化祭は9月。 全員に振り付けを指導するのに…通いじゃ足りない。 「雅、竜、ダンスいい感じ?」 同じクラスの嵐が休み時間に俺たちに話しかける。 「いい感じなんだけど…さすがに通いながらは無理かも」 「そっか」 そもそも学園の生徒の9割が寮に入っている。 ダンス部の3年生は全員寮だ。 家が近いとはいえ夜遅くにエリックに迎えに来てもらうのも悪いし、移動時間も勿体無い。 そして朝も夜も練習したい。 「俺も寮だったらなぁ…」 「じゃあさ、自由寮使えば?竜と同じ部屋で」 嵐が最高の提案をする。 自由寮とは、軽くいうと寮に入っていない生徒が寮を使うこと。 通常の寮費よりは少し高いが、洗濯等もしてもらえるし、通いだけど夜遅くまで残りたい生徒はよく利用している。 「あ、いいじゃん。俺の部屋広いし、同室なら打ち合わせもしやすいよ」 「自由寮か。それ最高だわ。申請って簡単だっけ?」 「簡単だよ。あとで申請書印刷してくる」 嵐は生徒会役員だから、この学園の仕組みをだいたい把握している。 嵐は高等部から編入してきたのにな。 (俺は中等部から) ゲームばっかりしてるのにな。 (登録者数50万人) でも学年トップだし。 (脳の作りが違うんだろうな) 読モもしてるぐらいイケメン。 (親が芸能事務所の社長だからコネかもな) ―…ん、軽く親友dis? 「というわけで、U-18大会が終わったら文化祭までの2ヶ月間、竜と同室の自由寮に住むから」 「そうですか。頑張ってくださいね」 そしてU-18の大会は優勝し、7月半ばから竜と同室の自由寮に入ることになった。

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