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第6話 ハルさんも同じでしょ?

「え……何急に……え?」 「その驚いたリアクションは、何おかしなこと言ってんだこの人、じゃなくて、もしかして同じタイプの人間?って意味じゃないです?」 「え……あ……」 タカがじっとハルの目を見つめる。 見透かされているような気分になった。 「もしかしてタカさん、あの……視える、とかですか」 「はい、そういう類の人間です」 「……」 「でも視えないこともあります。その時々で、感じるだけのこともあります。たまに聞こえたりとか。でも1番よく機能するのは目かなぁ。だから視える、という感じです」 「視えるのかって聞いて、タカさんすぐに答えましたけど、何を指しているのか分かるんですね」 「はい。そりゃあ、もう。僕からこの話題出しましたし」 「そうなんですか。びっくりした。……えっと、はい。僕もそういう時、あります。けどあまり口にしたことなくて。誰かに言ったとしても、勘が鋭くなるときがあって~みたいな言い方するようにしてて」 「そうですよね。なかなか急に自分から"僕視えるんです"なんて言わないですよね」 「え、あ、まあ……。でもなんで僕に? というか、なんで僕もそうだって思ったんですか?いくらそういう気質があるとはいえ、僕は相手が自分と同じタイプの人間かどうかってのは分からないんですけど」 「ああ、それは僕がここにきた目的に関係しているんですよ。だからハルさんのこと少し知っているんです」 「えっ。まさか透視のようなこともできるんですか?」ハルが目を丸くして少しのけぞった。 「いや、透視はわかんないです!あはは。すごく可愛い反応。笑ってしまうんですけど」 タカはケラケラと笑って答えた。 「よかった。さすがに透視は恥ずかしいというか」 「そうですよね。僕も透視されるのは嫌です。ていうかこの時点で会話が成り立っているのが嬉しいですよ、ハルさん。僕前にもこういう話を友人にしたことあるんですけど、会話らしい会話になりませんでしたから」 「そうなんですか。まあでも、そうなりますよね」 「はい」 2人は互いに笑い合った。 「で、その、目的というのは」 「ハルさんのお兄さんに関することなんです」 「……」 「僕の歳が31って言った瞬間、お兄さんのこと少し思い出したんじゃないですか?」 「え、あ、まあ。同い年なんだなとは思いましたけど」 「僕が昨日、ハルさんのお兄さんの話にちょっとだけ食いついてたからかもしれませんが。31と言った瞬間に目の奥の色がほんの少し変わったので」 「目の色……」 「はい。目の奥、というのがあって。僕は目が機能するタイプの"そういう"人間なんで」 タカは自分の目を指差してニコっと笑いながら言った。 いわゆる視える人たちにもタイプがある。肌で感じるタイプもいれば、匂いで感じたり、音で感じるタイプの人もいる。おそらくタカは目で感じるタイプなのだな、とハルは思った。 「昨日の時点ですぐに言うべきだったかもしれないけど、ハルさん疲れてるようだったし。なんとなく次の日、今日がいいかなって」 「兄と、知り合いなんですね」 「はい。知り合いです。いや、それ以上と僕は思っています。元同級生でした」 「え……」 「高校の同級生」 「そうだったんですね」 「その時の話もしようと思っ」 タカが言いかけた瞬間、ハルが遮って聞いた 「兄は……」 「あ、すみません。遮って。あの……兄は今どこにいるんですか」 「まず先にそれを伝えるべきでしたよね、すみません。ハルさん薄々勘づいているかと思います。お兄さん、もういないんです」 「死んだんですね」 「はい」 その瞬間、また心地よい風が2人を包み込んだ。 「やっぱり、そうですか」 「はい」 「タカさんの言うとおり、なんとなくそんな気はしていたんです。そう思ったことが一度あって。でもなんていうんですかね、聞くのが怖くて。ほら、聞かなければ僕の中では兄は死んでいないじゃないですか。だから聞かなかったんですよね」 ハルは、ああやっぱり母親のあの泣いていた姿はそういうことだったんだな、と思った。 「なのに、僕は兄を探そうとまでしてた。あはは。バカですよね。自分にウケます」 ハルが悲しい表情で笑った。 「そんなことないですよ、ハルさん」 「でも、兄が生きてるかもしれないという不確かなことが、僕の、なんていうかモチベにもなっていたんですよ。いろいろと」 あはは、とハルがまた笑った。 そんなハルをじっと見つめるタカ。 「てか、なんなんですかこの出会い。ちょっと急に頭の中で処理できなくなってきました」 タカは透視はできないと言ったけれど、ハルはタカにじっと見つめられるとまるで全てを見透かされているような気分になるので、しばらく目線を海に向けて話していた。 込み上げてきた涙に覆われている目を見られたくない、という気持ちもあった。 「ハルさん。正しいとか正しくないとかそういう話ではないんですけど、結果としてハルさんの心の中ではお兄さんは生きていたんですよ。だから僕も呼ばれた。呼んでくれた。それでよかったんだと思いますよ」 「え?呼ばれた?どういうことですか?」

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