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第18話 良かったら、友達になってくれませんか?

ハルは、タカがどんな人生を歩んできたのか気になり始めていた。 同じタイプの人間と、視えるだとか感じるだとか、そういう類の言葉を交えてここまで話したことはない。 ときよりニコニコと笑ったり、優しく落ち着いた声で話すタカだが、たまに見せる悲しく冷たい視線。一体どんなものを視てきたのだろう、どんな人生を歩んできたのだろう、とハルは思った。 「あの、そういえば僕がここに来るのはどうやって知ったんですか」 「それもお兄さんが見せてくれたんですよ。この海の景色を。文字じゃなくてこの海の景色だけ。だから探すの大変でした。ネットの画像検索を駆使しましたよ」 ははっとタカが笑う。 「えぇ……それは大変そう」 「僕の視えかたや機能、少しだけ分かってきましたか?はは。万能ではないんですよね。まあここ崖でちょっと特徴的ですから、検索しまくりまして。なんとか」 笑いながら話すタカ。 「あの、ずっと思ってたんですけど、ここって宿はあそこしかないと思うんですよ。タカさんもそこに泊まっているんですか?」 ハルが宿の方角を指差して言う。 「いや、泊まっていないです」 「え、じゃあどこに」 「車です」 「ぇえ!?だって車は苦手って言ってましたよね」 「はい、苦手です」 「え、じゃなんで」 「えーっと……僕はハルさんが来る場所は分かっても日時までは分からなかったから、融通がきく車をと思って。レンタカーを長期で契約してて」 「えっまさか車中泊ですか」 ハルが目を丸くして言う。 「はい」 「ぇえ!あの宿、宿泊できなかったんですか」 「宿泊……できたと思いますけど、僕が何泊もしてハルさんが予約できなくなったら嫌だなと思って」 「いやいや、ここって穴場な場所でしょうし今は大型連休でもないしそんな予約埋まらないですよ」 「あはは。そうですよね」 「ええ……タカさん、なんていうか……変わっていますね」 クスクスっとハルが笑う。 そんなハルを優しい眼差しで見つめるタカ。 「あ、でも安心してください。たまにシャワーは浴びに移動したりしてたので清潔さは保ってますよ」 別に臭わないでしょ?とでも言いたそうにタカは笑いながら自分の体臭を嗅ぐそぶりを見せた。 「僕はハルさんが来る数日前には来てました。この海……いまはもう暗いですけどね、この海はお兄さんがぼくに見せた海そのまんまでした。だから必ずハルさんが来る、僕はそう確信をもっていました」 「そうなんですか。いや、でもなんか逆に申し訳ないというか」  「いやいや、僕が勝手にそうしただけですし気にするところじゃないですよ。それで昨日、やっとハルさんに会えたということです。ハルさん見てすぐに気づきましたよ。ヒロにそっくりだから。髪型は違うけど」 「そうなんですか」 「あ、すみません。僕はお兄さんのことヒロって呼んでいたから、つい」 「あ、いえ」 「とりあえず、こうして会えてよかったです」 「あの……もしかしてと思って一応言うんですが、僕は別にここで何かしようとか考えていませんから。そこは安心してください」 「それはわかっています」 「え……」 「ハルさんがこんな綺麗な海の前で、そんなことするはずがありませんから。なんて」 「海の前か、そっか」 ハルはその言葉の意味をなんとなく察し、ははっと笑った。 「やっぱりタカさんに透視されている気分です」 「だから、してませんって」 二人は笑いあった。 夜にしては暖かい風が、二人を包み込んでいた。 「そうだハルさん、よかったら僕と友達になってくれませんか?」

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