さっきまで薄暗かった空はすっかり濃い藍色に変わり、屋台を装飾する光が非日常的な風景を醸し出している。 「屋台でなんか買って腹ごしらえしようぜ」 「うん、湊何食べたい？」 「んー俺はとりあえず焼きそばかな。焼きそば食べたらフランクフルト食べて、かき氷も食べたいなー」 「湊…絶対にデートの練習ってこと忘れてるでしょ」 「あ…」 「かわいい彼女はそんなに一気に食べないんじゃない？」 「うぅ…」 デートの練習ということをすっかり忘れていた。 「焼きそばの次はわたがしとかの方が良かったか…」 「はあ。わかってない…まあ、湊っぽくて良いや」 眉毛を下げ少し困ったような顔で笑う憂太は普段の数倍かっこよくて、ふとした表情にドキッとしてしまう。 「ね、見て、あの人すっごいイケメンなんだけど」 「ほんとだ。背、高い。浴衣めっちゃ映えるじゃん」 「隣の子、友達かな？声かけてみる？」 通りすぎる女の子たちの憂太を気にする声が聞こえてくる。 「あ、湊！焼きそば屋さんあるよ」 当の本人は気づいてなさそうだ。 なんとなく憂太は俺の彼氏役としてきてるんだよ！みんなのじゃない！って周りの女の子たちに言いたくなる。 「なあ、憂太…」 焼きそばを食べ終わって話しかける。