68 / 82
【番外編】 特別待遇?/憂太の彼氏力が高かった理由②
どうやって「憂太の彼女」としての俺を自分で周囲にどのように紹介したかという話題から脱出しようかと考えていたら、ファミレスの店員が料理を持って、2人のテーブルの前に現れた。
「チーズハンバーグの方?」
「はいっ」と勢い良く返事をする。
目の前に置かれたチーズがたらりと垂れて、熱い鉄板の上でジュウジュウと音を立てているハンバーグに目をやる。
美味そうな見た目に、チーズが鉄板にまでたれて焼ける音や、ハンバーグにかかっているソースの香りが加わって、よだれが垂れそうだ。
「いただきます!」
料理が運ばれてきたことで、自然と話題も変わった。
「うまぁ…あー、俺のハンバーグ欲が満たされる…」
「ハンバーグ欲って」
憂太がもぐもぐと口に頬張りながら笑っている。
「それより!憂太!俺、ずっと疑問だったんだけどさ」
「んー?」
憂太は何のことか全く検討がついていなさそうに首を傾げた。
「憂太って、彼女できたことないーとか言ってた割には元から彼氏っぽい感じあったよな?」
「うーん?そう?」
「そうだよ!だって、俺がいつも、よしここは…と思ったタイミングで、なんか色々先越されて、こっちの方がドキドキさせられるみたいになってもん」
「ドキドキしてくれてたの?」
「……うん、されっぱなしだった。だから、いっつも後から彼氏力高えなって思い出してた」
憂太は嬉しそうにハンバーグを口に放り込んで、うんうんと頷きたいのか、笑たいのか分からない食べ方になっている。
随分前から憂太は、人として気がきくとかいうレベルを超えているなと思っていた。
ハッとして、口に入っているものをごくんと飲み込む。
「え!?憂太、実は昔は男女問わず普段からあんな感じで接してた…とか…?だから無意識にモテてたとか!」
「なんでそうなんの?そんなわけないでしょ」
憂太が何て言い返せば良いのか分からないと言いたそうに困った表情を浮かべている。
「いやいや、憂太…俺、正直なところ、割と最初の頃から憂太に対してドキドキしてたのよ。だからさ…」
憂太にとっては当たり前の行動が、知らないうちに人を魅了しているのではと推測した。
「はぁ…湊、前にした人の真剣な話聞いてた?僕は割と早い段階で湊のことを好きになってたって話」
「お、おう…キイテタ」
「なんでカタコトになってんの」
「いや、外なのに堂々と俺のこと好きとか言うから…」
突然、好きという単語に反応してドギマギしている俺を見て、「湊が始めたんじゃん」と言って、全く恥ずかしがる様子もなく食べ続けている。
「でもまあ、湊、ちゃんと聞いてたなら分かるでしょ?」
「んん?」
どういうことだ?
俺にだけ特別ってことで合ってるのか?とハンバーグを頬張りながら考える。
ともだちにシェアしよう!