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【番外編②】小柄で華やかな女子/憂太の過去 (1)
※憂太視点で物語は進みます※
湊と付き合うきっかけになった麻生さんからの手紙。
実は見つけてから半年も経つというのに未だに読めていない。
「はぁ、1人で読むのもなぁ…」
高校時代の記憶がトラウマになった原因である人物からの手紙なんて怖いに決まっている。
湊と付き合い始めて半年。
梅雨も終わり、初夏といえる季節になってきている。最後の高校の夏を思い出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
高校2年。
文化祭実行員を経て、3月。
もうすぐしたら春休みに入り、4月になれば高校生活も残り1年だ。
「ね、憂太くん。今時間ある?」
話しかけてきたのは、同じクラスの文化祭実行委員だった麻生さんだ。
彼女は小柄で華奢な身体つきなのに、周りの人を惹きつける華やかさを持った女子だった。
「ある…けど、どうしたの?」
「あ、よかったぁ。あのね、ちょっと相談に乗ってほしいなーって」
色素の薄さを感じさせる茶色のクリっとした大きな目。
「うん、僕でいいなら」
麻生さんよりも遥かに背が高い僕を見上げる様子は、図らずも綺麗な上目遣いになっていた。
「彼氏のことなんだけどね、最近喧嘩しがちでさ。同じ男の子である憂太くんなら、どう考えるのかなって」
相談といっても恋愛相談だった。
麻生さんの彼氏とは性格も見た目も全然違うから、僕の話が参考になるのか疑問だったけど、悩みが少しでも楽になるならと真剣に答えた。
「そっかぁ。やっぱり、憂太くん良い人だね。ほんとに相談してよかった!ありがとう。また相談してもいい?」
そう言って、ふわふわとした長い髪を耳にかけ直した。
ふわっと甘くていい香りがした。
「僕で良ければ」まあ、文化祭実行委員を共に頑張った仲だしなぁと思った。
その後も何度か相談を受けたが、毎回彼氏と喧嘩したとか、別の誰かに告白されちゃったとか、恋愛に関するものだった。
麻生さんみたいなキラキラした人がどうして僕を頼るのかは、いつまで経っても不思議だったけど、「ありがとう」と言って嬉しそうにするから気にしなかった。
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