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第14話

「まずはお食事をお持ちいたします。それから、湯をお持ちいたしましょう」 「手間だろう? 薪ももったいない。今は冬でもないのだから、水で構わない」  水を湯に。ただそれだけのことにかかる手間と金を頭の中で考えてしまうのは、もう癖だ。もっとも、それは己が財務省で金勘定ばかりしているからという理由では、決して無いが。 「お身体を冷やされてはなりません。おみ足も痛みましょう。なに、宝石をちりばめた湯ではないのです。その程度のこと、坊ちゃまに許されないはずもございませんよ」  アシェルが何を考えているのか、それこそ赤子の頃より世話をしてきたじぃにはお見通しなのだろう。広い部屋にポツンとおかれたテーブルの前に車椅子を移動させて、じぃは一礼すると部屋を出た。  部屋で一人、ポツンといると力が抜ける。知らず、アシェルはグルリと部屋を見渡して小さくため息をついた。  元々あった、少々古くなった寝台と、亡き母が使っていた可愛らしい鏡台。そして目の前のテーブル。広すぎる部屋には少なすぎる家具であるが、それもまた致し方のないことだ。  ノーウォルト侯爵家。バーチェラ国の中でも古く、現王妃の実家でもあるこの家は、今資金難に陥っているのだ。元々は王都にある小さな別邸に住んでいたアシェルが、この本邸に帰って来たのもまた、少しでも金を得るために別邸を売ったからに他ならない。

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