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第16話

 話を聞いてくれない兄に兄弟の心は離れ、本邸に寄りつかなくなった。泣きじゃくって心が壊れそうになったフィアナを心配した国王のラージェンが、婚姻に先立ってフィアナを城に住まわせることで彼女を保護し、ジーノは物心ついた時に決められていた許嫁と結婚して婿入りし、本邸を離れた。アシェルも父から幼き頃に与えられた別邸に移り住み、父の様子を見に帰ることは頻繁にしていたが、長男夫妻とは距離を取っていた。  だが、もはやどうしようもないほどに金が足りなくなり、それでも妻を諫めることのできないウィリアムはアシェルに泣きついてきたのだ。アシェルが住む別邸を、売ってくれと。それでも足りないからと、使用人たちも次々に暇を出し、客間などにある金になりそうな家具も売り払った。おかげで、アシェルの部屋は広さに見合わぬ簡素さで、使用人も長男夫婦の側付き数人を除けば、年老いたじぃだけが残り、父やアシェルの世話を一人でしている。

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