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第21話

「じぃの事はお気になさいますな。それよりも坊ちゃま、じぃは坊ちゃまの事が心配でございます。まだ事故の傷も癒えておられないというのに幾日もお帰りにならず、やっとお帰りになられたと思えば、このようにクッキリとクマを作っておやつれになって。城では湯殿も仮眠室もあると聞きますが、それでも、ご不便だったでしょうに。ゆっくりお休みになれなかったのでは?」  アシェルは生まれつき足が動かなかったわけではなく、財務省に足が不自由な者はアシェル以外にいない。周りの者も、アシェル自身も動かぬ足に慣れておらず、当然当直の者達の為に用意されている湯殿や仮眠室も、アシェルに配慮したものではない。 (確かに、あれは大変だったな……)  仮眠室はともかくとして、湯舟は高さがあってそもそも入ることができず、身体や髪を洗うのも一苦労だった。人の手が借りられない状態で身を綺麗にすることがこれほどに大変だったのかと思い知ったほどであったが、それをこの老執事に言えば嘆いて仕事を辞めた方がと言いそうなので、決して口に出すことはしないが。
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