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第34話

 今日はアシェルが財務省の会計官として勤務する最終日であるが、それはアシェル個人の事情であって、世間一般的には凱旋した第一連隊を労い、褒章を授与する華やかな式典の日だ。国王はもちろん、上司たるサイラスも式典や舞踏会などで夜まで忙しいだろうと思い、アシェルの用事はさっさと終わらせようと朝早くに登城した。式典は押し寄せる国民のことも考慮して昼からとなっている。挨拶といっても長々としたものではないのだから、通常通り政務をする予定の朝に行く分には迷惑にならないだろう。そう何度も時間を計算して登城したはずであるのに、アシェルが馬車から降りた瞬間に待ち構えていた侍女や侍従に囲まれ、問答無用で車椅子を押されて見知らぬ小部屋に連れてこられるとはどういうことだろうか。 「……確かに爵位も持たない三男ではあるが、説明もなくこのような仕打ちをされるいわれも無い。その制服を見るに城の侍女と侍従のようだが――」  どういうつもりだ、と目を顰め睨むアシェルに、有無を言わさぬ強引さで連れて来たはずの侍女や侍従たちはいっせいに膝をついて頭を垂れた。

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