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第42話
「少しではありますが、まだ時間に余裕はあるのでどうぞお召し上がりください」
オレンジの果肉が入ったジュースに、ひと口で食べられるよう切り分けられたサンドイッチ。小さな器に盛られた、宝石のように輝くカットされたフルーツたち。なるほど、これもフィアナが用意させたのだろう、アシェルの好物ばかりだ。しかし、好物を並べられて純粋に目を輝かせ、何もかもを忘れてしまうような歳はとっくに過ぎ去った。
「ありがたいが、それより王妃様が呼んでいるのだろう? 先程も言ったように私は陛下とサイラス様に挨拶をしに行かなければならない。もう随分時間が経ってしまったが、今なら式典までに間に合うだろう。今日は夜まで式典やら舞踏会があるはずだから、それが始まる前に挨拶をするためにも、王妃様がお呼びならすぐに案内してほしいのだが」
ここまでされてはもはや意地を張る気も失せるが、それでも今日登城した目的だけは果たさなくてはならない。早めに終わらせなければ、今日中に田舎の屋敷へ移動することもできなくなる。ウィリアムはともかくとして、メリッサはうるさく言うだろうから、できれば彼らが式典や舞踏会に参加している間に出ていきたいのが本音だ。しかし侍女も侍従もニコニコと微笑み食事を促すばかりで、フィアナの元へ連れて行ってくれる様子もなければ扉の前の侍従も動こうとはしない。
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