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第45話

 さて、どうしようかと無表情で頭を悩ませていれば、車椅子は人気の少ない回廊をクルリと曲がった。その時ふと、違和感を覚えてアシェルは顔を上げる。 (こっちは、たしか……)  城は王族の住居であるが、同時にアシェルの職場でもある。流石に中央部分に足を運ぶことは少ないが、それでも内部を全く知らないわけではない。確か、アシェルの記憶が正しければこの先には大広間があるのではなかったか。そう、舞踏会や式典が催される、城の中で一番広い場所――。 (まさか――ッ)  はッ、と顔を上げれば、アシェルの予想通り見上げるほど巨大な扉が先に見え、その扉を守るように近衛の隊服を身にまとっている兵が立っている。なぜこんな所に、と困惑しているアシェルをよそに、侍従は迷うことなく扉へ近づいた。開かれたままの扉の向こうには、最奥にある玉座こそ空席であるものの、バーチェラ中の王侯貴族が既に揃っている。もうすぐ式典が始まるのだろうと誰の目にも明らかであるそこに、侍従は車椅子を押したまま入ろうとした。 「ちょ、ちょっとッ」  流石に大声を出すのは憚られ、アシェルは小さく叫ぶという器用なことをしながら慌てて車輪につけられている持ち手を掴んだ。急に車輪を止められた侍従は一瞬慌てたものの、すぐに体勢を直して立ち止まる。付き従っていた別の侍従が慌ててアシェルの前まで移動し、膝を床につけた。

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