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第65話

〝お兄さまのお荷物はそのままロランヴィエル邸に送るよう手配をしておきましたから、ちゃんと届いているはずですわ。今日はロランヴィエル公と一緒に舞踏会に参加して、そのままロランヴィエル邸に帰ってくださいね。大丈夫、もうノーウォルト本邸に戻る必要はございませんわ〟  そう言って楽しそうに笑いながら、フィアナは部屋を出ていった。おそらく舞踏会の為に着替えをするのだろう。王妃たる彼女は、本来このようにアシェルと話ができるほど時間の余裕はないのだ。だが、アシェルを説得するためにあえてこの時間を用意したのだろう。アシェルが思っていた以上に、フィアナはアシェルの扱いを心得ているようだ。この無理矢理着替えさせられた豪奢な衣装も式典のためではなく、舞踏会のためなのだろう。 「体調の方は大丈夫ですか? 今日は随分と驚かせてしまったようですから、お疲れでないと良いのですが」  白銀の礼服が汚れるのも厭わず膝をつき、車椅子に座るアシェルに視線を合わせたルイは言葉こそ丁寧であるものの、王から許可を得られたからか遠慮なくアシェルの頬に手を伸ばした。

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