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第77話

「あなたを誘わないなんて勿体ない――と、言いたいところですが、だからこそ私が名乗り出る時間があったと考えれば喜ぶべきなのでしょうか」  やっぱり褒められている気は微塵もせず、なんならこれを褒めていると捉えている時点でアシェルにとってのルイがどういう存在かを思い知らされて辛くは思うが、きっと何もわかっていないのだろうアシェルにあえてそれを口にすることはしなかった。代わりにチラと外に視線を向け、立ち上がる。 「さて、あなたとダンスができるならもう少し、と思うのですが、今日はそんな気分でもなさそうですし帰りましょうか。陛下と王妃殿下もお部屋にお戻りになられたようですし、後は無礼講ですからね」  気づけば夜も更けており、本日の主役である第一連隊の者たちも舞踏会などが苦手な者は帰宅していた。この様子なら連隊長であるルイが帰宅しても問題はないだろうが、帰る場所がノーウォルトの本邸でも田舎に買ったはずだった屋敷でもないことを理解しているだけに、ケーキで少し上向いていた気分が急降下してしまう。

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