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第120話

「今日は顔合わせのお茶会ですが、身体が辛くなったり気分が悪くなったりしたらすぐに言ってくださいね。父も昼前には到着する予定ですが、ちゃんと私が側にいますから安心してください」  ウィリアムやメリッサ、カロリーヌたちには仕事があるからお茶会の時間は厳守でと伝えてあるが、ルイはこっそり休みを取ったようだ。ずっと側にいて手取り足取りアシェルの世話をすると楽しそうに笑う彼の姿は、おそらく世の人々が焦がれて止まない理想の夫であるのだろう。だがアシェルはそんなルイの献身を煩わしく思い、反発して暴れだしたくなる。彼は何も悪くないというのに、泣きわめいてバンバンと寝台を殴りつけたい気分だ。 「……ここまで来て陛下や王妃殿下は勿論、公爵の名に泥を塗るような真似はしない」  抱き込む腕を退けてズルズルと寝台の上を這って離れようとした瞬間、ポフ、とアシェルの背が寝台に落ちた。先程まで上体を起こしていたというのに、まるで体重など存在しないとばかりに押し倒され、何が起こったのかさっぱりわからないアシェルは苛立ちも何もかもがどこかに消え、ポカンと固まった。 「ルイ」 「…………は?」  急に謎の動きで押し倒してきたルイは先程までのニコニコとした顔はどこへやら、ひどく真剣な眼差しで自分の名前だけを告げた。彼が何を言いたいのかさっぱりわからなくて、アシェルは思わず気の抜けた声を零す。

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