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第154話

 まるで悪魔だ。  そう影で、時には真っ直ぐに見つめながら言われたことなど数えきれない。どれほど微笑もうと、礼儀正しくしようと、人々はルイの珍しい黒髪と赤い瞳を見て、まるで絵画に描かれる悪魔のようだと言って蔑み、遠ざかった。  父は母を愛していたようだが、母は貴族とはいえ身分が低く、貴族としての体面を保てないほど貧窮していた。そんな下級貴族と王家の血すら流れている公爵とでは身分が釣り合わないと周りからは反対されていたが、父はそんな反対を押し切って母を娶り、すぐにルイが産まれた。周りからは悪魔のようだと言われたルイのことも母はひたすらに愛し、可愛がってくれた。けれど、やはり心労は溜まっていたのだろう。頭痛を訴えた母は倒れ、幼いルイを残してこの世を去ってしまった。そして悲しみにくれる父に親族が半ば無理矢理に推し進め結婚した二番目の妻は、徹底してルイを忌み嫌い遠ざけた。  たとえ高貴な公爵家の息子であっても、ずっと悪魔だ気味が悪いと言われ続ければ自分を奮い立たせることもできなくなる。次第にルイはどれほど暑くとも、たとえ室内であったとしてもフードを被り俯いて、誰にもその髪と瞳を見せることはなかった。そうすることで周りの目を気にして常にキョロキョロと視線を彷徨わせる必要もなくなり、ちょっと変わった子と見られるかもしれないが〝悪魔〟と言われて傷つくこともなくなってルイの心は保たれていたが、そんなルイを母が亡くなってから避けるようになった父は貴族としての義務だとでもいうように茶会などの社交界に連れて行った。

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