157 / 196

第157話

「君はロランヴィエル公爵様のところのご令息だよね? お母さまがここの伯爵様と仲が良いから早くに来ちゃって、だから公爵様と一緒に伯爵様に挨拶しているのを見かけたんだ」  少年の言葉にピクリとルイの肩が跳ねる。ルイが何者であるかを知っているなら、この髪も瞳も噂程度には知っているのだろう。また何か言われるのかと構えるルイに気づいていないのか、少年は穏やかにルイを見た。 「あ、そういえば名乗ってなかったね。僕はアシェル。アシェル・リィ・ノーウォルト。さっきいたのは妹のフィアナ・リィ・ノーウォルトだ。よろしくね」  あまりに穏やかな声音で言われて、ルイは思わず顔を上げた。視界に映る彼はルイの髪も瞳も僅かであったとしても見えているはずなのにとても優しい微笑みを浮かべている。 「お茶会は苦手? 実は僕も苦手なんだ。お母さまがついてきてって言ったのと、フィアナのお供で来たんだけど、あんまり大人数に紛れるのは好きじゃないし、息がつまる」  内緒だよ? と言ってアシェルと名乗った少年はふふふふ、と楽しそうに笑った。

ともだちにシェアしよう!