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第246話

「ロランヴィエル公が側にいてくださるので、あまり心配はしていないんですけれど。それでも、少しはこうして足を伸ばさないと痛みますでしょう?」  疲れや凝りをとるように足を揉むフィアナにアシェルは慌てて手を伸ばす。妹とはいえ王妃に何をさせているのか。 「フィアナ、大丈夫だから。お前がそんなことをする必要はない」  手を離すように何度も促すが、変なところで頑固な妹はアシェルの言葉を聞き流し、優しく、しかし力を込めて揉んでいく。 「ねぇ、お兄さま。お兄さまはずっと、私にたくさんのものをくださいましたわね? 今もずっと、私のことを気にかけてくださっていると、わかっていますのよ。それは妹として、とても嬉しいことですわ。ありがたいとも思っておりますの。でもお兄さま、私はお兄さまに何をお返しできるのかと、ずっと考えておりますの」  足を揉みながら少し俯くフィアナにアシェルは瞳を揺らす。たまらず、アシェルは妹の肩に触れた。 「見返りを求めて兄でいるわけじゃない。フィアナ、もうそんなことは考えなくて良い。フィアナが陛下と仲良く、幸せになってくれれば、それが充分にお返しになる。だからフィアナ、お前は他にいっぱい考えないといけないことがあるんだから、僕のことは気にしなくて良い。大丈夫だから」  できるなら、忘れてくれとさえ願っている。そんなこと、流石にフィアナには言えないけれど。 「……お兄さま、私はもう、護られるだけの小さな子供ではありませんのよ?」  今度は兄を守ることだってできる。そう言いたそうな妹に苦笑して、アシェルは肯定と否定の為に頷いた。

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