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第14話 銀狐、熱に浮かされる 其の三

 説明しながら白霆(はくてい)は薬包紙の包みを開けた。中に入っていたのは黒い色をした小さな丸薬だ。    「この薬は媚薬の『激化状態』を弱めて鎮静化させるものです。ですが貴方は短時間に二度掛けられ、しかも少し口にしてしまっている。効きが悪いかもしれませんが、飲まないよりはいいかもしれません」    (こう)は少しばかり戸惑った。小康状態という表現を白霆はしていたが、まさにその通りで晧の心の中に冷静な部分が生まれている。『媚薬』という薬で痛い目を見ているのだ。それを弱める薬だと目の前で差し出されても、信用出来る要素がないのだ。  では何故、彼に自分は身体を預けてしまったのか。  冷静な今の内に答えを見つけ出そうと、じっと白霆(はくてい)の銀灰の瞳を見つめた刹那。    ──どくり、と。    心の臓が、大きく鳴った。  どくり、どくりと嫌な脈の打ち方のする鼓動が、酷く五月蝿い。  やがて足元から頭の先まで、舐めるように這い上がってくる熱い快楽に。   「……っ──ああぁっ……!」    晧は艶やかな喘ぎ声を上げた。  身体が熱くて仕方がない。熱さを逃がしたくて息を吐いているというのに、吸い込む空気すらも熱い気がして、嫌でも身体が昂っていくのが分かる。   「はぁ……、ぁはぁ……」    衣着越しからでも分かるほどに、晧の若茎は猛々しく天を向いていた。今すぐに腰紐を解いて自身を取り出し、これでもかと扱いて熱を吐き出したい。  目の前に白霆がいるというのに、晧の頭の中は法悦を得ることで一杯だった。  だが身体がもうずっと痺れていて、全く言うことを聞かない。甘い息を吐きながら晧は、喘ぎ呻いては手を何とか動かそうとする。だがやはり動かない。   「──っあ、あ……っ!」    もどかしくて、焦れったくて。   「……申し訳ございません、貴方に薬を飲ませます」    白霆(はくてい)の声をどこか遠くで聞いた気がした。  気付けば身体を起こされて、背中を白霆(はくてい)の胸に預けるようなそんな体勢になる。  すっぽりと収まってしまう自分の身体。  ふわりと香るのは、昔にも嗅いだことのあるような、懐かしくも本能的にとても安心してしまう香りだ。 

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