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第30話、終幕
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ちびっ子達の悪戯で、レオンはまた青いドラゴンを産んだ。
今度は女の子だったので、それを知った同じ青いドラゴンのフィーリアが喜びを隠しきれない様子で目の前にある広間ではしゃぎ回っている。
「フィーとおなじおんなのこ! レオンまたうんで!」
それを聞いてレオンが遠い目をする。そんなレオンを横抱きにして歩きながらランベルトが苦笑していた。
「ねえおねがい!!」
「あー、でも次に産まれても男の子かも知れないぞ?」
このままだと永遠に出産させられそうだ。それだけはさすがに勘弁して欲しい。
せっかく青いドラゴンになれるようになったのに、どちらかといえばランベルトに特訓をして貰いたかった。
「フィーリア、レオンは疲れているから休ませてあげよう」
「はーい」
ランベルトがその後会話を交わしながら何とか宥めすかして、女官たちにフィーリアを預ける。
部屋に入りベッドに腰掛ける。毎回貧血で死にそうだ。
「あー、もー、あいつらには本当に振り回されてばっかりだ」
そこまで考えて、ランベルトを見つめる。
「なんかさ……」
「え? 何? 何言おうとしてるか分かったけど言わなくて良いよ?」
ランベルト自身も痛感しているらしい。気まずそうな顔をしていた。
隣に腰掛けてきたランベルトに向けて口を開く。
「良かったな、ランベルト。仲間がたくさんできたからもうお前一人だけ〝異質〟じゃないだろ?」
揃いも揃ってあのチート加減だ。育てばランベルトと並ぶかそれ以上になるだろう。
今後が楽しみだ。
「覚えてたの?」
ランベルトが大きく瞬きした。
「当たり前だ。ランベルトの言葉は覚えてるよ」
「ふふ、嬉しい」
持ち上げられて膝の上に乗せられる。背後から抱きしめてくるランベルトを見る為に上を向く。長く伸びたランベルトの髪の毛が顔にかかった。
「お前は髪伸びるの早いよな。俺全然伸びないんだよな。昔はそうでもなかったのに何でだろ?」
「レオンにはその長さが一番似合うからね。俺が魔法で調整してるし伸びないの当たり前だよ」
「……」
無邪気に笑われ、唖然としたまま閉口せざるを得なくなる。
——ああああ、本当にこの親子たちはそっくりだ。人の体を勝手に弄りやがって……。
腹は立ったが、諦めの気持ちの方が先に来た。
「ダメ?」
甘ったるい声で言われると毒気さえも抜かれてしまう。
「あー。いいよ、もう。ランベルトの好きにしてくれ」
「そう? じゃ、さっそく」
横抱きに変えられて口付けられた。
「ずっと先延ばしになってた結婚式もしたいんだよね。一日目は王宮内だけでやって、二日目はパレードで街に出るの。いつの間にかこんなに子沢山になってて、皆んなびっくりしちゃうよね」
「ははっ、間違いないな」
想像しながらランベルトと笑う。
「その後旅行も行きたいな〜。人魚族とか獣人族の国行ってみる?」
「行きたい! その前に俺この国も全部回ってみたい」
「いいよ、じゃあ全部回ろう」
「全部!?」
それは恐らく無理だ。王が長らく国を空ける訳にはいかないだろう。
「ランベルト忘れてないか?」
「え、何を?」
「これからずっと一緒にいるんだろ? 一度に行かなくても大丈夫だ。俺は間を空けて余韻も楽しんで回りたいかな」
「ああ、そうか。まだ契約してる時の癖が抜けないや」
じゃあそうしよう、と本当に本当に幸せそうにランベルトが笑うのでこっちまで照れくさくなってきて、顔を綻ばせる。
その数ヶ月後に行われた結婚式とパレードでお披露目も兼ねて全員で回ると、驚き過ぎた人々の中に倒れてしまう者まで現れた。
青いドラゴンや不死鳥が現存しているという事実とも相まってのトリプル効果だ。
おかげでmgフォンのシャッター音が鳴り止まない。お調子者のちびっ子たちは乗せられるままに被写体になっていた。
緊張しまくりだったレオンがゆっくりできたのは、パレードが終わって王宮に帰ってきてからだった。
これから二日間だけランベルトと二人っきりの新婚旅行に行く。
精霊族の国を回る予定だ。
「じゃあ、出掛けてくる!」
「「「「「いってらっしゃい」」」」」
皆んなに手を振って、久しぶりに箒に跨る。浮遊魔法に比べてこちらの方が魔法消費量が少ないからだ。
「ランベルト! 俺海見たい! 人族の国で住んでた家の前はお前みたいなパライバトルマリンで綺麗でさ、それであの家選んだんだよ!」
「ここの海はレオンみたいに青くてずっと見ていたくなるよ? 楽しみだね」
嬉しそうに表情を緩めたランベルトに向けて、同じように微笑み返した。
【了】
読んで下さりありがとうございました!
これからもちょこちょこと加筆修正を入れるかも知れませんがご了承くださいませm(__)m
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