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13異常発生

「ますます女が嫌いになったよ、ロン」 「お前、本当に女運が悪いなぁ」 「良くなっても困るけど、できれば普通くらいが丁度いい」 「口喧嘩でも訴えてくるとか、もう女が信用できんかもしれん」 「ロン、それじゃ僕と付き合いたくなったらいつでも言って!!」 「あんなに気が強いのはアビスハンターだけだろ、俺はまだ他の一般女性に夢を持っている!!」  オウガが僕にしとけばいいのにと残念そうに言った、俺もオウガが女だったらもう結婚してると思った。でもオウガは男で俺の性的対象にはちょっとならなかった、ちょっとと言ったのはこの首都テンプルムだと男性のカップルも多くみかけたからだ。俺は今回の件で女が怖くなったし、逆にオウガのことが可愛く思えるようになってしまった、これはオウガ自身には絶対に秘密だった。 「気をとりなおしてアビス退治といくか」 「今回は五体だって」 「普通のアビスだったら、楽勝だな」 「油断しないでね、ロン」 「おう、もちろん油断はしない!!」 「アビスって本当に怖い、化け物なんだから」  妙に村人が少なかった依頼があった村の海岸で俺たちはアビスを待った、すると五体現れたので油断をせずに倒した。だがその後が問題だった、また五体のアビスが現れたのだ。そいつらを倒したら、また五体。俺とオウガは朝になるまでに百体以上のアビスを片付けた、さすがに俺たちも朝が来てアビスが出なくなったら安心した。 「久しぶりに、仕事したって感じだぜ」 「本当、ロンに一晩中、稽古つけられてたの思い出した」 「何なんだ、あのアビスの数は!?」 「黒石が残っているから、夢じゃなさそうだね」 「黒石を拾うのも、一苦労だな」 「でも早くハンターギルドで、このことを伝えないと」  そうして俺たちは慌てて黒石を拾い集めた、そして依頼達成印を村人から貰ったが、ここから避難した方が良いと俺たちは伝えておいた。それから慌てて首都テンプルムに帰ると、ハンターギルドのお姉さんにこのことを伝えた。首都テンプルムから一時間くらいで帰れる距離なのが幸いした、そうでなかったらアビスに備えてどちらかが残らなければならなかった。 「受付のお姉さん、実は百体以上のアビスが出てきたんです」 「ええ!? 本当だ、黒石が百個以上ある!?」 「これってやっぱり異常事態でしょうか?」 「はい、これはアビスの異常発生の可能性が高いです!!」 「異常発生?」 「アビスがずっとその場所に出続けることが時々あるんです」  そうしてその村、カンビオ村には調査団とアビスハンターが送られることになった。俺たちはさすがに百体以上のアビスを倒して疲れていたから、黒石を弾丸用は除いて換金してそうして宿屋で休むことにした。最初は俺は一人で寝たと思っていたら、いつものようにいつの間にかオウガが俺のベッドにもぐりこんでいた。 「カンビオって村は、今のところ大丈夫そうだな」 「何組もハンターが向かったってさ」 「それじゃあ、俺たちは他の地域を片付けるか」 「うん、分かった。他の依頼を引き受けてくるよ」 「カンビオ村が、早く落ち着くといいけどな」 「大丈夫だよ、何組もハンターが行ってるしね」  その次の日、ハンターギルドに行ってみたらカンビオ村にアビスの異常発生と出ていた。今のところ夜だけ特定の場所に出ているようだった、何組かのハンターが既に現場に向かっていた。だから俺とオウガは他の地域のアビスを片付けることにした、乗合馬車で移動して幾つかの村でアビスを倒してまわった。それ以外の時間はいつもどおりに、俺たちは運動場で戦闘訓練や筋トレをしていた。 「オウガ、貴方がアビスの異常発生を発見したんですって」 「こんにちは、アレシアさん」 「きっと貴方が主にアビスを倒したんでしょう」 「………………」 「やっぱり貴方は素敵よ、お荷物のおじさんなんて要らないわ」 「………………」 「ねぇ、早くお荷物のおじさんを捨てて、私の公私共にパートナーにならない?」 「………………」  俺は筋力トレーニングをしていたオウガに、すり寄ってきたアレシアの暴言の数々に、これは来るぞと俺は慌てて耳を塞いだ。俺が思った通りオウガがアレシアに向かって言い返した、今まで貯めていた鬱憤をはらすようにアレシアに、いや運動場にいたハンター全員に向かって叫んだ。それはオウガの本心であり、今までずっと言いたかったことでもあった。 「ロンをお荷物扱いするな!! ロンがいなければ僕は十歳で碌な目にあわず死んでいた!! 僕のアビスハンターとしての技も、ロンが全て教えてくれたものだ!! これ以上僕のパートナーを馬鹿にするならこっちも訴える!!」 「――――――!?」  オウガに言い返されてアレシアはとりあえず黙ってその場を去った、でも口喧嘩でも訴えてくるということがある女ハンターだから俺は少し心配だった。その代わりにその運動場にいたハンターから俺は一目置かれるようになった、オウガがあそこまで言うのならそれなりに強いに違いない、そんな噂が広まって俺は運動場での訓練がやりやすくなった。 「ロンの魅力を自分で広めちゃった、僕って馬鹿」 「なんだよ、俺は嬉しかったぜ。オウガ」 「だってその代わりに、ロンに声をかけてくるハンターが増えた」 「夜のお誘いとかはまだねぇぞ?」 「あったら僕が全力で潰す」 「お前、ほんっと俺に関することには一生懸命だな」  俺がオウガの頭を撫でてやるとオウガは気持ちよさそうにしていた、それでアレシアの騒動は一応収まったようだった。アレシアがオウガに声をかけてくることも無くなった、そうしてカンビオ村のアビスの異常発生もおさまったそうだ。この件で黒石を稼いだアビスハンターがいっぱいいた、カンビオ村も移住者をつのって再生する兆しを見せていた。 「そろそろ、俺たちも正式にこの首都テンプルムに移住するか?」 「それが良いね、ここならハンターとして仕事が沢山あるし」 「それじゃ、オウガ。俺と一緒に住む部屋を見つけるか?」 「僕も一緒でいいの!?」 「あっ、そうか。掘っ立て小屋の時と同じ感覚で俺としたことが話してた、別に部屋は一緒でなくていいのか」 「絶対に一緒にするよ!! もう僕は俺と一緒に住むかって聞いたもん!!」  俺としたことが最近オウガと一緒にベッドで寝てることが多いから、昔の掘っ立て小屋と同じ感覚で住む場所を考えていた。でも一度出た言葉は訂正させて貰えずに、俺とオウガは一緒に住むことになった。治安が良くてそれなりの値段の部屋を俺たちは探した、ハンターギルドのお姉さんにも聞いてみたら、ハンターギルドから近くにある物件を薦められた。 「ここは家族三人向けか? 確かにベッドが二つあるけど、一つは子ども用かな?」 「子ども部屋を客室にしたらどう? 普通のベッドを入れて貰えばいいよ」 「もう一つのベッドが二つある物件を見てみようぜ」 「ベッドは大きいのが一つあれば良いのに……」 「おっ、こっちはベッドが二つあって部屋が分かれてるぜ」 「それじゃ、ロン。勝負だね、じゃんけん~……」  俺たちはベッドの問題で揉めたが、結局は主寝室が一つと客室が一つある部屋に決めた。こういう時に俺はオウガにじゃんけんで勝てた試しが無い、どうでもいいことだったらじゃんけんでも勝てるんだ。オウガは広いベッドを手に入れて上機嫌だった、あとは防音もしっかりしているそうで、多少俺たちが喧嘩しても大丈夫そうだった、五階にある眺めも良い部屋だった。 「ロン、戸籍も僕の戸籍に移して良い?」

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