1 / 1
10歳の初恋
「お前みたいな痩せっぽちは、俺の子どもじゃねぇ!!」
「………………」
僕には皆が持っていて当然のはずの名前が無い、僕と同じ金髪に金色の瞳をした母親は僕を生んでくれたが名前はくれなかった。そんな母親の元でなんとか十歳まで生き残って、父親という黒髪と黒い瞳の男に会ったが、彼にとっても僕はいらない子どもだったみたいだ。僕は世界中からいらない子どもなのかもしれないと思った。そうして、僕が父親に連れていかれたのは売春宿だった。
「ちっと痩せちゃいるが、顔はまぁまぁなガキだ、金貨一枚」
「確かにこのくらいの子どもが好みって客もいるけどねぇ、銀貨5枚」
「ちょっとあんたがしこめば使い物になるさ、銀貨九枚」
「飯を食わしても、客がつくかどうか分からない、銀貨七枚だね」
「ああ、まぁそれでいい。銀貨七枚だな」
「どうにか壊れる前にそれくらい稼いでもらうさ」
僕は女島で女から酷いことを沢山された、でも実の父親である男も碌な人間じゃなかった、僕は男も女も嫌いになった。いや世界中のなにもかもが嫌いになった、いっそ死んでしまいたいと僕は思った。そしてぼーっとしている僕に向かって売春宿のババアは言った、今まで聞いたことがないような信じられない酷いことを言った。
「いいかい? お前に客がついたら、何でも客の言う通りにするんだよ」
「僕は何をさせられるの?」
「お前がすることは簡単さ、客に足を開いていりゃいい。そうすりゃ、勝手に客が突っ込んでくれるよ」
「突っ込むって何を?」
「お前の足の間にぶらさげてるものだよ、お前みたいな痩せっぽちじゃ血が出るだろうが死にゃしない。銀貨七枚以上稼ぐまでは生きててもらうからね」
「………………」
僕はとても酷いことをさせられるみたいだった、父親はだったらいっそ殺していってくれれば良かったのにと彼を恨んだ。売春宿のババアに言われたような、そんな酷いことが僕にできるとは思えなかった。きっと僕は二、三回玩具のように扱われて死ぬだろう、そういう現実だけは嫌でも理解せざるを得なかった。
「ぎゃあああ!! 痛い!! 痛いよ!! もう止めて!!」
死にたいと思って僕は膝を抱えて座り込んだ、そうしたらしばらく経って男が一人やってきた。その男は僕以外の女の子っぽい男の子を選んで店の奥に入っていった、しばらくしたらその子のぎゃあああとか、痛い、痛い、とか色んな悲鳴が聞こえて僕は怖くて仕方がなかった。悲鳴が聞こえなくなったら男が現れて売春宿のババアに銀貨を一枚払っていた。
僕は銀貨七枚だったから、少なくとも七回以上酷い目に遭うのか、僕が絶望していた時だった。物凄い勢いで走ってきた男がいた、紫色の短い髪に黒い瞳をしたまだ若い綺麗な青年だった。こんなに綺麗な男の人も子どもに酷いことをするのか、僕はそう思ったがこの人が相手だったら良いかなと思っていた、でもその人は信じられないことを言いだした。
「おい!? ババア!! 今日ダリルが売った子どもはまだ無事か!? 客とらせてないだろうな!?」
「おや、ロンがここへ来るなんて珍しい。ああ、あの瘦せっぽちならまだ売れてないよ」
「そうか、それじゃ俺が引き取る、あの子はハンターなんだ」
「なんだって!? ダリルのやつめハンターの売り買いは禁止されてやがんのに、あたしから金だけはとりやがって!?」
「いったいいくら取られたんだ?」
「あんな痩せっぽちに銀貨七枚だよ!!」
そうして僕はその綺麗な男の人に、ロンに引き取られることになった。ロンは優しくて僕にまず名前をくれた、そしていっぱいご飯を食べさせてくれたり、新しい服や靴を買ってくれたりした。そうしてロンの住んでいる家に連れていってくれたが、これが凄い掘っ立て小屋だった。そうして一つしかない寝床で寝るように言われた、ロンも一緒に横になったが彼はすぐに寝てしまった。
どうしてだろう僕は僕にロンが何もしなかったことが残念だと思った、それでちょっとロンに触ってみたが彼はぐっすりと眠っていた。何をしても起きそうにないので、僕は本当にどうしてそんなことをしたのか分からない、分からないけれど僕はロンの唇にキスをした。そうしてみてもロンは起きなかった、僕は胸が物凄くドキドキして顔が真っ赤になっていた。
「どうしよう、僕はロンが好き」
それが僕のロンへの長い片想いのはじまりだった、もう他の男も女もどうでも良かった。僕はロンだけが欲しくて、欲しくて、欲しくて堪らなくなった。それからロンに僕は育てて貰うのだが、ずっとこのロンが好きだという想いは変わらなかった、ロンは優しくて良い人で僕はますますロンのことが好きになった。ロンと一緒に眠るときにはこっそり悪いことをした、触れるだけのロンの唇へのキスを僕は繰り返したのだ。
「ロン、大好き」
ともだちにシェアしよう!