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2、突然の再会 後編
急に突きつけられた言葉が理解できず、俺は前の席の大貴に尋ねた。
「あの副担Normal なのか?」
「そう言ってただろさっき。まぁあの見た目でNormalって言われても納得いかないよな。Sub は儚くて庇護欲そそられる奴が多くて、Dom は威圧的でいかにも強者ってイメージ強いし。先生もろ前者のイメージにピッタリじゃね?」
大貴の言った通り、晴陽と名乗る先生は、Normalっぽくない雰囲気をしていた。それに、すごく、どこかで嗅いだことのある、いい匂い惹きつけられる。
花岡先生の隣に立つ彼を眺めていると、さらに大貴が問いかけてきた。
「TheイケメンDom様はどうなんだ?Normalでも欲求って満たせるもんなのか?」
「…分からない。やったことないし」
「でもさすがにNormalとは付き合えないんじゃね。俺らCommand 効かねーから。それ即ちお前の欲求は満たせない。だからやっぱり無理だな、わっはは」
「そんなの…やってみなきゃ分かんないだろ!」
俺は晴兄だったらNormalでも構わないのに、否定される筋合いはない。DomはSubとしか付き合えないとか、Normalは無理だとか、勝手に色々言われて俺は頭に血が上り、勢いに任せて大貴を怒鳴ってしまった。
そんな俺に対して、花岡先生は俺の怒鳴り声よりさらに大きな声で怒ってきた。
「佐藤、椎名、いい加減にしなさい。あなたたち声大きいんだから、喧嘩はHR終わってからにしてよね」
「「すみません…」」
「お前が怒鳴るから俺まで怒られちゃったじゃんか」
「悪かったな…」
「まぁ俺も悪いこと言ったよ。まさか怒鳴るほどあの副担に一目惚れしていたとは。珍しいこともあるもんだ」
大貴はそう言って前を向いてしまった。
一目惚れとは違う。晴兄へのこれは執着だ。夢にまで出てくるほど恋焦がれていたんだ。Subだと思っていたんだ。いや、離れ離れになる前、晴兄は絶対にSubだった、と思う。それがNormalで再会するなんて。
俺が8年思い続けた晴兄は、俺が理想のまま思い描いた幻想の晴兄で、今目の前にいるのが現実の晴兄なのだろうか。
たとえそうであっても、もう俺の走り出した思いは止まるところを知らなかった。
本当に晴兄がNormalなのか。何かの間違いなんじゃないか。Normalだったとして、晴兄は俺と付き合ってくれるのか?
――自分の目でしっかり確認しないと、こんなの前に進むこともできないよ…
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